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チコリ
第一章
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                 チコリ
 姉ヶ崎薫はいつも言っていた、自分の夢のことを。
「私絶対に美容師になるから」
「人の髪をセットするのか」
「そうするのね」
「うん、そのお仕事をするから」
 幼い時にだ、両親にあどけない笑顔で話すのだった。
「何があってもね」
「そうか、じゃあ一杯勉強しないとな」
「美容師になる勉強をしないとね」
 両親はその薫に笑顔で話す。
「そしていいびようしになるんだぞ」
「目指すのならね」
「うん、私凄くいい美容師になるから」
 幼い顔を満面の笑顔にさせて言う薫だった。
「そうなるよ」
「頑張れよ、薫」
「お父さんとお母さんも応援するからね」
「有り難う、お父さんお母さん」
 薫は笑顔で言う両親に自分も明るい笑顔で返す。
「私頑張るからね」
「そんな薫ちゃんにね」
 母は薫にだ、ここであるものを出した。それはというと。 
 青い綺麗な小さい花だった、その花を渡してこう言うのだった。
「このお花をあげるわね」
「このお花何ていうの?」
「チコリっていうのよ」
「チコリ?」
「そう、チコリっていうの」
 それがこの花の名前だというのだ。
「綺麗なお花でしょ」
「うん、とても」
 薫はその青い花、今手にしているそれを見ながら母に答える。
「こんな綺麗なお花はじめて見たわ」
「薫ちゃんが生まれる前にね」
「その前に?」
「お父さんがお母さんにはじめてくれたものなの」
 このチコリの花がだというのだ。
「凄く綺麗でしょ」
「うん、とても」
「お花屋さんに行ったら一番綺麗だったんだよ」
 それでだとだ、父も話すのだった。
「それでプレゼントに選んだんだ」
「お母さんもこのお花を受け取ってね」
 そしてだというのだ。
「お父さんと一緒になったのよ」
「つまり薫が生まれたのはな」
 父は薫笑顔で話した。
「このお花のお陰なんだ」
「チコリのお陰なの」
「だからきっと薫にとって力になってくれるからな」
「薫ちゃんにもあげるわね」
「そうなの」
「そう、だから美容師になれることもな」
「きっとこのお花が導いてくれるわ」
 父と母を結びつけてくれたチコリがだというのだ。
「そのお花を忘れない様にな」
「いいわね」
「うん、わかったわ」
 薫も満面の笑顔で応える、そうしてだった。
 幼いその頃から美容師になることを決意して頑張るのだった、薫の部屋にはいつもチコリが飾られる様になった。
 中学生の時薫は友達を部屋に呼んだ、すると友達は部屋の中薫の机の上にあるチコリを見てこう彼女に言った。
「薫ちゃんチコリ好きなのね」
「うん、大好きなの」
 実際にそうだとだ、薫は友達に笑顔で答えた。
「いつもね」
「そうなのね」

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