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エース
第五章
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った。本音をそのまま。
「いい奴なんだな」
「褒めても何も出ないけれどそれでもいいんだね」
「ああ、構わない」
 最初からそんなものは求めていない。だから本音を言ったのだった。
「全くな」
「いいね、その男意気」
 今度は未樹が赤藤を褒めてきた。言葉が微笑んでいた。
「その意気だよ」
「その意気でやれってか」
「その意気があれば何の問題もないからさ」
 こうも言うのだった。
「だからね。投げるのもね」
「そうだな。投げる」
 そのことをまたしても決意する。そして。
「だから今は走る」
「その男意気でだね」
「ああ、走るさ」
 言いながら走り続ける。既にその距離は普通の日のそれを超えている。だがそれでも走り続ける。その横にいる未樹を感じながら。
「今はな」
「今はだね」
「もうすぐまた病院だ。その時に」
 言葉を続けていく。
「肩がどうか聞けるさ。ひょっとしたらもうすぐ投げられるようになるかも知れない」
「もうすぐなんだね」
「ああ、ひょっとしたらだけれどな」
 こうは前置きする。
「それでも。俺はやっぱり」
「投げるんだね」
「ああ、投げる」
 決意した言葉がまた出される。それはさっきのものより強くなっていた。
「絶対にな」
「投げればいいさ。けれどその時は」
「その時は?」
「私が見てもいいかな」 
 不意にこう言う未樹だった。
「あんたが投げるのを。見てもいいかな」
「ああ、好きにするんだな」
 未樹の今の言葉を受けての返答だった。
「あんたが好きなようにな」
「じゃあそうさせてもらうさ。それじゃあ」
 また走り続けていく。何があってもという感じで。
「その時にまた会おうな」
「楽しみにしているよ」
 こう言いながら走っていく。二人並んで。この日はこのままお互い疲れ切るまで走った。それから数日後。彼は医者の診断を受けこう言われた。

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