第43話 咲と初瀬 A
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咲は初瀬を追ってずいぶん長い距離を歩いた。
大人の男と子供の咲では歩幅や体力が違いすぎる。足はすでにマラソン大会直後のような有様。
何度も膝に手を突いて荒い息をし、置いて行かれそうになりながら、それでも咲は初瀬を追いかけた。
彼を放っておくのも、彼に放っておかれるのも、我慢ならなかった。
「ねえ、初瀬くん。何でこんなとこ来たの? 何もないよ?」
「何、も……」
初瀬はまた怪しい足取りで工場の中に入っていく。ちょうど人がさっき入れ違いに出て行ったばかりのようだから、工場内に入っても人はいなかった。
「あっ」
咲は気づいた。工場内のカーゴ車に、ヘルヘイムの果実が絡みつき、車体を覆っていた。
「これ……あの“森”に生ってたヤツだよな」
「たぶんだけど、ここでヘルヘイムにつながる裂け目がひらいたんだと思う。裂け目の近くにこの植物が生るって、紘汰くん言ってたから――」
果実に触れることはしない。戦極ドライバーを持つ咲が触れたら、果実はロックシードになってしまう。インベスゲーム中止を訴える自分が新しいロックシードを持っていては、他のチームに示しがつかない。
何となしに蔦を軽くなぞっていた咲の手を、横から初瀬が掴んだ。
「は、初瀬、くん」
「……これ、ロックシードになんだろ?」
「そう、だけど」
「じゃあ取ってくれよ。俺に。俺にはロックシードが必要なんだ。力が必要なんだよ」
「だ、だめだよ。チカラなら――戦極ドライバーがあるじゃない」
「壊れた」
「え」
「壊れたちまったんだよ。俺のベルト。だからインベスが要るんだ。インベスが追っかけてくるから。あのブラーボとかいう奴も、白いアーマードライダーも、俺を狙ってやがる。ベルトがないんだよ俺は。インベスがいねえとやられちまうんだよ」
しゃべる内に初瀬の目の焦点が咲から外れていき、手を握る力が強くなっていく。
「おかしいだろ。俺だけあんな奴らにビクついて暮らすなんて。もう一度あの力さえあれば俺はたすかるんだ。たすかるんだよ。だから、なあ、たすけろよ、おれのこと。なあ」
もう片方の手が咲に伸びる。殴られるのかと思って、咲はとっさに歯を噛みしめた。だが。
「たすけてくれよぉ……!」
初瀬は何もせず、咲の肩を掴んでその場に頽れた。
(オトナがこわがるとこ、はじめて見た。オトナにもこわいものってあるんだ)
咲はそっと、項垂れた初瀬の頭に手を置いた。初瀬の体はびくんと跳ねたが、振り解かれることはなかった。
咲はそのまま初瀬の頭を抱き込んだ。彼がひどく哀れに思えた。
『グォォォ!!』
「! インベス…!」
工場の外からセイリュウインベスが突っ込んで来ている。咲は初瀬を離して背
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