第一章
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カレーライス
飯降時彦と飯降真は親娘だ、普段は仲がいい。
しかし今二人は家の中で喧嘩をしていた、まずは時彦が言う。
「いや、カレーはやっぱりな」
「辛口だっていうの?」
「辛く、それこそ火を噴く位じゃないと美味しくないだろ」
こう真に力説するのだった。
「やっぱりな」
「辛いカレーなんか食べられないわよ」
真はむっとした顔で父に返す、黒髪をショートにしておりきりっとした顔をしている、背はあまり高くなく身体つきはすらっとしている。全体的にボーイッシュだ。
その真がだ、そろそろ肉がついてきて髪の毛も白くなろうとしている父に言い返す、その言い返すことはというと。
「甘口でないと」
「じゃああれか、カレーに林檎や蜂蜜を入れるのか」
「そうよ、ルーだってね」
カレーをカレーたらしめるそれもだというのだ。
「甘口でないと」
「馬鹿を言え、ルーも辛口だ」
これが父の主張だった、娘にムキになった顔で言う。
「そして唐辛子や色々なスパイスを入れてな」
「辛くするっていうのね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そこまで辛くしないとな」
「美味しくないっていうのね」
「それで何で御前は甘口なんて言うんだ、お父さんは悲しいぞ」
「決まってるでしょ、甘口が美味しいからよ」
だからだというのだ。
「それでなのよ」
「全く、どうかしている」
「どうかしているのはお父さんよ」
真も真で言う。
「何で辛いカレーなのよ」
「美味しいからだ」
父もこう言って引かない。
「決まっているだろう」
「何処がよ、辛いと食べられないじゃない」
「甘いカレーなんて食べられるか」
「私甘いものが好きなの」
「お父さんは辛いものがだ」
二人共ムキになっている、お互いに一歩も引かない。その二人にだ。真をそのまま成長させた様な中年の女がこう言って来た。
「二人共何言ってるのよ」
「何って?」
二人は同時に彼女に返した、時彦にとっては妻、真にとっては母であり喜和子に対して。
「だからカレーのことだよ」
「辛口か甘口かってね」
二人はそれぞれ喜和子に言う。
「辛口だよな、カレーは」
「甘口よね」
「お父さんは辛口だと言っているんだけれどな」
「甘口に決まってるわよね」
「真がこう言って聞かないんだ」
「お父さんおかしいでしょ」
それぞれムキになっている顔で喜和子に話す。
「母さんは辛口だよな」
「甘口よね、やっぱり」
「真おかしいんだよ」
「お父さんどうかしてるわよね」
こうそれぞれ言う、だが。
喜和子は怒った顔でだ、こう二人に言ったのだった。
「下らないことで喧嘩しないの」
「何っ、下らないか?」
「それはないんじゃないの?」
「下
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