第四章
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「じゃあどうしてそんなことを言うんだよ」
腹が立ってきていた。言葉にもそれが出ていた。
「下手をしたら動かなくなるだろ、そうしたら二度と」
「やっぱり怖いんじゃないかい」
「なっ!?」
また怖いと言われて。怒りはしなかった。そのかわり頭から冷水を浴びせかけられたような気分になった。それで言葉も止まってしまった。
「それが怖いんじゃない。私の言った通りね」
「怖い・・・・・・」
「大事にするのはいいさ」
未樹はまたしてもこれは認めた。
「けれどね。怖がったら駄目なんだよ」
「怖がったら」
「そう、怖がったら何にもならないんだよ」
未樹は言う。
「何にもね」
「そういうものか」
「あんた、怖がったら駄目だよ」
「俺は別に」
「今投げろなんて言わないさ」
未樹もこのことはわかっていた。しかしそれと共に。別のこともまたわかっているのだった。そしてこのことを今赤藤に対して語るのだった。
「けれど。怖がったら駄目さ」
「・・・・・・怖がったらか」
「お医者さんから投げてもいいって言われる時期があるよね」
「ああ」
未樹のその言葉に頷く。
「もうすぐだ」
「もうすぐなんだね」
「もうすぐだけれどな」
「まず無理はしないことだよ」
前を見据えたままの言葉だ。しかしこの言葉は赤藤だけに向けられた言葉だった。今自分自身の横に走る彼に対する言葉だった。
「それと一緒に」
「怖がらないか」
「最初は何処で投げるんだい?」
「さてな」
その質問には答えない、いや答えられなかった。
「まだそこまで決めていないな」
「まだなんだね」
「まださ。けれどわかったよ」
そのうえでまた言ってきた。
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