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函館百景
その1
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ようなパーキングエリアを通りすぎて、トンネルに入る。
 青函トンネルは中に入っても、暗い壁ばかりで、これといった特徴がなかった。
 撮るに撮れない。
 トンネルの中の竜飛海底駅も薄暗い。
 降りても見るところがあるのかどうか。

 トンネルから出ても、北海道に入ったという気がわかない。
 畑に囲まれて一戸建てや工場が続くという、新幹線の車窓によくある風景がだらだらと続いていた。

 指定席の車両だが、右側の席はがら空きだったので移動すると、やっと海が見えてきた。
 ようやく、別世界に、北海道に来たという気がしてきた。
 函館は港町。
 海が見えた方がそれらしい。
 『北海道らしさ』はないものの、『港町らしさ』は実感できる車窓。
 やっと函館らしくなってきた、といえた。


 そうこうする間に
 『間もなく、終点函館です』
 というアナウンスが流れてきた。
 何となく東北の駅とは違う作り。
 やはり北海道には北海道らしい駅がひつようなのだろう。
 ちょうどコの字型にプラットホームが作られていた。
 海を横にして走った列車らしい漢字はしていた。
 とはいっても、JR函館駅の近くに海はない。
 駅ビルやデパートなど、それなりに発展した町という気がしたが、それだけでは普通の都市で、個性はない。
 しかも、避暑も兼ねて北海道に来たのに、汗をかくほど蒸し暑い。
 その日の最高気温は29度だったという。

 函館の個性を感じられないまま、僕は函館駅のホームに足を踏み入れた。


続く。


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