暁 〜小説投稿サイト〜
函館百景
その1
[2/3]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話

 家族の勧めで買ったデジイチカメラは、今回の旅で初陣ということになり、旅行期間中ずっと首にかけ、撮影体勢に入ることになった。
 コンパクトカメラとは違い、かなり重い。
小学生の時に使った、鉛分銅を首にぶら下げるような感じで、ホテルに行った時にはすっかり首がこってしまっていた。
 本当は年季の入ったコンパクトデジカメもあったが、充電してもすぐ切れてしまうほどバッテリーが老朽化してしまっていた。
 加えて、ぼかし等を入れ、本格的な撮影を楽しめるのがいい。
そう勧められたのである。
 新幹線の車窓から、いちいちふたを開けたり閉めたりして、写真を撮ったりしていったが、そのうち面倒くさくなり、カメラのふたをポケットに入れて車窓を取るようになった(ふたは旅行中、どこかに行ってしまった)。
 とは言え、霧が深く、車窓から見る風景はあまり期待できるものではない。
焦点を合わせる場所を選択できるから、狙いを定めた風景を綺麗に撮れるカメラであったが。

 乗る前に自販機でCCレモンを買ったのはよかったと思っている。
喉越しがいいし、電車の中で買うと高いのである。
 集中すると喉が渇くものだ。
 霧深い車窓が晴れてきたのは、花巻あたりに入ってから。

 これから綺麗な写真が、いくらでも撮れる。

 これから、
 というときに、盛岡あたりを過ぎたあたりで、僕は白河夜船をこいでいた。
 車窓を刮目して見る。という思いはどこへやら。
 それとも、前日の寝付きが悪かったのか。
 いつも、いくら寝てもね足りないのである。

 目を覚ましたのは、終点の新青森駅近く。
 あまり変わらぬ田園風景が続いているが、とりあえず到着した。

 新青森から函館まで向かう特急は、緑色のひたち、という感じの電車であった。
 指定席が禁煙席だったのでタバコ臭い、ということもなかったが、左側の窓際の席で合ったのは、後で振り返るとちょっと残念だった気がする。
 海は右手にあるのである。
 この特急は一風変わっていて、新青森を出発してから、いったん反対方向を進んで青森駅に到着した後、函館駅に向かうのである。
 なかなか世界は広いものだ。
 青森駅周辺もなかなか開けた場所で、サラリーマンや家族連れ、20人くらいの人が函館を目指し てこの特急に乗ることになった。
 一風変わった絵柄を持つデパートの方が、妙に印象深かったが。


 青函トンネル前後の車窓は、大いに期待にしていた。


 期待はずれであった。
 地味。あまりにも地味。
 見慣れた田園風景を両脇に挟んだと思ったら、すぐトンネルに入ってしまう。
 以前家族と一緒に行った、袖ヶ浦アクアラインとはけた違いに地味。
 アクアラインは両脇に海を挟んだ道を通り、豪華客船をあしらったかの
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ