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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十七 凶報
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為、ようやく眠りについていたナルは寝惚け眼を擦った。再び聞こえてきたノックに急かされ、扉を開ける。
「夜遅くにごめんな」
「アマル!どうしたんだってばよ?」

見知った顔に驚くと共に、喜んで部屋に迎え入れる。寝ていたところを起こされたので不機嫌だったナルの顔が瞬く間に笑顔となった。
「いや、先生がナルの師匠さんと飲みに行っちゃってさ…。それにナルともっと話したかったし」
気恥ずかしそうにしながら部屋へ入って来たアマルに、照れ臭そうに頭を掻いたナルは、彼女が大事そうに抱えている動物を見て目を瞬かせた。
「子豚だってばよ!」
「トントンっていうんだ」
暫しトントンを交えて仲良く雑談する。不意に窓傍へ視線を向けたアマルが不思議そうに首を傾げた。

「植木鉢?なんでこんな所に?」
「オレが持って来たんだってばよ!」
にししと笑ったナルが鉢を覗き込んだ。可愛らしい小さな黄色い花に思わず口許が緩む。


うずまきナルトが見舞いに持って来た花々。
種類ごとに植え替えた為、九つにまでなった鉢植え達は人捜しの旅に出掛ける際も持って行こうとしたほど、ナルにとって大切な物だ。如何せん自来也に止められたので、いのに面倒を見てくれるよう頼み込んだが。
だが特にお気に入りの鉢だけは一つ持って来ていたのだ。


「見舞いに来てくれた人がくれたんだってば」
先ほど水をやったばかりの花を愛おしそうに眺める。花弁に溜まる露の玉をそっと指の腹で拭い取るナルの横顔をアマルは羨ましそうに見つめた。
「いいなぁ、ナルには見舞いに来てくれる人がいて……――オレもさ、原因不明の病に掛かった事があるんだ」

胸の辺りをぎゅっと掻き抱くようにして、アマルは窓枠に腰掛けた。窓を開けると涼やかな虫の音が室内に流れ込んでくる。
虫の演奏会に耳を澄ませていたアマルは、天高くある月を仰いで寂しげに微笑んだ。

「オレ、捨て子なんだ。近くの村で育てられたけど、病に掛かった途端、村人はオレを隔離した。看病してくれる人なんて誰もいなかった」
「…………」
「なのにあの人は…病がうつる事も怖れず、オレを治療してくれた…オレの、命を――――救ってくれたんだ」

そこでアマルは、傍らで心配そうに自身を見上げるトントンの背を撫でた。
「コイツも死にそうな大怪我した事があってさ。だからあの人がオレに言ってくれた…「頑張れ」という励ましの言葉を掛けたんだ」
心底嬉しそうに撫でながら「そしたら、こいつも助かった」とアマルは微笑んだ。彼女の身の上話を、寸前とは打って変わった真剣な顔で聞いていたナルがおずおずと口を開く。

「その人が…アマルが捜してる恩人…なんだってば?」
「うん…命の恩人で、オレにとっての『神サマ』なんだ」

そこで口を噤んだアマルはそっと月を見
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