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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十七 凶報
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子豚を腕に抱える弟子の姿。


今やペットと化している子豚のトントンを連れて来たのは綱手でもシズネでもなく、アマルだった。
野犬にでも襲われたのか、血だらけの子豚を見つけてきた弟子は涙を浮かべながら綱手に縋った。
だが運の悪い事にシズネは外出しており、血液恐怖症である綱手は子豚に触れる事も出来なかった。その一方でアマルはまだ頼りない医療忍術を駆使して、子豚の怪我を治そうとした。

その際アマルが豚に掛けていた言葉が綱手の心を強く揺さぶったのである。
「大丈夫、大丈夫だ!此処には優秀なお医者様がいるから…っ!だから…頑張れ!!」

血が怖くて近づけもしない自分を優秀な医者だと告げたアマル。弟子の必死さに心動かされた綱手は、気がつけば息も絶え絶えの豚を治癒していた。怯えながらも滴る血を止める為に、医療忍術を施したのである。
その一件が契機だったのだろう。不甲斐無い自身に嫌気が差した綱手は、以降血液恐怖症を克服しようと努力し始めたのだ。



「動物だろうが人間だろうが関係ない。目の前の命を救うのが医者なんだと、弟子に気づかされるなんて情けない師匠だよ」
「…それじゃあ、もう血は怖くないのか?」
「まだ完全に治ったわけじゃないけどね。大分マシさ」
そうか、と感嘆の声を漏らした自来也が不意に訊ねる。
「それで?その弟子は何処に行ったんだ?」
「ああ。あんたの弟子の所へ遊びに行くって言ってたよ」
「…子どもってのはすぐ仲良くなれるからええのう」
微笑ましげに笑い合いつつ、酒とつまみに舌鼓を打つ。ふと今思い当ったように赤ら顔で綱手が問い掛けた。

「ところで、あんたの弟子ってのは誰だい?」

酔っ払って聊か火照った顔を机に伏せる事で冷ましていた自来也は、うつ伏せのまま呂律の回らぬ口調で答えた。
「四代目の子だ」
「どっちだい?」
綱手の突飛な問いに、自来也は突っ伏していた顔を上げた。意味が理解出来ず、怪訝な声音で「何言っとる」と逆に訊ねる。

「アイツの子は一人だろーが。波風ナル…九尾の人柱力だよ」
「え…」
自来也の返答に綱手は急に真顔になった。自分の記憶とは違う。

狐につままれたかのような表情を浮かべていた彼女は、自来也の怪訝な顔を眺めている内に、徐々に自身の記憶のほうが妙に思えてきた。「悪かったね、思い違いのようだ」と謝罪様に酒を煽る。


(酔いが回ったな…。四代目の子が双子だなんて…)
頭を振る。拍子に揺れた手許の酒が小さな波紋を描いていった。


(ありえない)





















こんこん、という音に波風ナルは目を覚ました。
「ん〜…?こんな夜中に誰だってばよ…」

猫のおかげで第一段階の目処がついた
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