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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十七 凶報
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って、同じ台詞で断られたのぉ」
すげなく断られても呵々と哄笑した自来也は昔を思い返すように眼を細めた。
「そう冷たくするな。五代目火影はお前にしか勤まらん――凄まじき大戦時代に木ノ葉の勝利に大きく貢献。その戦闘及び医療忍術においては未だ肩を並べる者はいない」
「…褒めても何も出ないよ」
聊か機嫌を浮上させた綱手が小さく鼻を鳴らす。彼女の言葉に「謙遜するな」と笑った自来也は、次の瞬間顔を引き締めた。

「これは相談役達による決定だ。流石のお前も木ノ葉の最高意志を無視する事は出来んだろう?」
「……同じ三忍としてなら、お前はどうなんだ?」
「冗談。わしはそんな柄じゃないのう」
ひらひらと手を振って、自来也は肩を竦めた。そしてやにわに、つまみの乗った皿を退かして身を乗り出す。
「その点、お前は初代火影の孫。能力と併せてもこれ以上火影として相応しい者がいるとは考えられん」
無言で酒を飲み干して、綱手は目を閉ざした。やがて薄く笑みを浮かべる。

「気ままな放浪旅も気に入ってたんだけどね…まぁ、検討してみるよ」
「…!そうか…っ!!」
綱手の色好い返事に内心意外に思ったが、自来也はホッと息をついた。
安堵からか、幾分和らいだ表情で御猪口に並々と酒を注ぐ。

「それにしてもお前さん、いつ弟子をとったんだ?以前はシズネと二人だけだっただろうが」
「ああ…アマルの事だね」
自来也の問いに綱手はどこか懐かしむように目を細めた。


綱手の弟子――アマルは捨て子だ。
以前はジャングルの奥地にある村で過ごしていた彼女だが、一度生命の危機に陥るほどの大病を患い、その際村人から隔離された。その一件以来、アマルは人を心から信じられなくなっている。

その彼女が唯一、心底信じているのが『神サマ』だ。

全治するや否や村を飛び出し、『神サマ』を捜す旅に出る。独り旅をしていたアマルを見兼ね、シズネが声を掛けたのが切っ掛けで綱手はその『神サマ』の話を聞いた。
当初半信半疑だった綱手だが医療スペシャリストという性分からか、自身もアマルが捜す『神サマ』とやらに会ってみたくなったのである。

『神サマ』が実際に存在する人物なのかは疑わしいが、アマルの体験談を聞く上ではその病は大変厄介なモノ。また、最初はそれを見返りも無く治癒したらしき相手に興味を引かれただけだったが、アマルが医術の才能に秀でていると解った為、気紛れに医療忍術を教授し始めたのだ。
その内、何時の間にか師弟関係になっていたのは少々予想外だったが。



「私はね、あの子に感謝しているんだよ」
「ほぉ?」
御猪口の中を覗き込んで微笑む綱手に、自来也は目を瞬かせた。彼女の思い出話を肴に酒を口にする。綱手もまた一口酒を口に含むと、静かに目を閉ざした。
瞼に浮かぶ記憶は
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