反董卓の章
第21話 「それで……ぃい……」
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火柱が、消えた。
―― 盾二 side ――
………………!?
気が付くと、俺は地面に倒れていた。
視界に入るのはひび割れた渇いた大地。
周囲に篭もる熱だけが、俺の顔を熱風となって凪いでいく。
「…………あ?」
思わず身体に力を入れようとするが、うまく力が入らない。
まるで四肢の力の入れ方を、俺自身が忘れたかのように……
(一体、なにが――)
俺の中に眠っていた、もう一人の俺。
戦闘機械だった『俺』は、まるで燃え尽きたかの様だった。
意識は確かに俺のもの。
正に入れ替わったかのような感覚。
だが、身体は全く動かない。
痛みも感じない。
ただ、自分が自分として戻ってきたという現実感だけが、今の俺の全てだった。
「――――っ」
誰かが周囲で動いた気配がする。
俺が眼だけをそちらに向けようとすると、首の筋肉だけが俺に従って少しだけ動いてくれた。
視界に入るのは、そこにも倒れている人物が一人。
(……呂布?)
俺のすぐ傍に倒れている褐色の肌。
赤い髪の毛が、俺の頬に当たる。
見ると目を閉じ、まるで力尽きたように気を失っている呂布が、そこにいた。
(………………相、討ち?)
おぼつかない頭で、状況を整理しようとする。
……つっ。
頭部から流れてきた血が、片目に入る。
どうやら……俺は今、血だらけのようだ。
その周囲は粉塵と黒煙で遮られていて、状況はそれ以外に掴めない。
「………………ぅ」
呂布が小さく呻く。
どうやら死んではいないようだ……やはり相討ちなのだろうか?
先程まであった自分でない感覚はもうどこにもない。
ただ、言いようのない虚無感だけが、俺の心にあった。
そレは多分――全てを思い出したから。
(……俺は、生き残るのか?)
死んだ方が楽になれる。
やるべきことも、やろうとしていることも。
すべてを忘れて、死んだ方が――
(このまま眠ってしまえば……もうきっと”俺”はいなくなれる。その方が――いい、か)
そう思って目を閉じようとした時。
誰かの手が、俺の身体を抱き起こした。
(――誰が……)
砂塵と噴煙の中、そこにいたのは一刀でも桃香でも朱里もない。
今俺が、最も頼りにしていた人物――
「主!」
――馬正だった。
―― 馬正 side 虎牢関 ――
「主!」
私はその腕で、主である北郷盾二殿を抱き上げた。
周囲は未だ粉塵と黒煙に覆われている。
誰もがその様子を伺い、皆が佇む中、私だけがその中へと入っていた
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