反董卓の章
第21話 「それで……ぃい……」
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―― other side ??? ――
まるで海の底のような薄暗い空間の中。
一人の男が、脂汗をにじませながら両手を前に出し、何かを抑えるような表情で苦悶していた。
男――そう、男。
それは筋骨隆々で白い褌のような物しか身につけていない、裸の漢。
――本人は否定するだろうが、外見は漢にしか視えない人物、卑弥呼だった。
「ぐっ……い、いかん」
普段は威厳がありながらも、どこか茶目っ気を演じるような口調。
だが、今の卑弥呼には、そんな余裕は全くない。
全身全霊で、なにかを抑えつけようと必死になっている。
「ちょ、貂蝉に顔向けできん…………このままでは!」
よくよく見れば、手を掲げている空間には透明な『何か』があった。
形容しがたい空気のような『何か』が、激しく蠢いている様に見える。
それは風一つ入ってこないこの空間の中で、さらに蠢きを膨れ上がらせる。
そしてそれは卑弥呼の腕を侵食し、腕の毛細血管が次々と膨れ上がり――
「ぐっ! 貂蝉、すま――」
「あなたともあろうものが、何を手こずっているんですか!」
「!?」
もはや堪えきれない――
そんな卑弥呼の横に、誰かの手が差し出された。
思わずその手の人物を見る。
「お主――于吉!」
驚愕、といった表情でその人物を見る卑弥呼。
そこにいたのは、本来であれば敵とも言える人物だった。
「何故、お主が――」
「ふざけないでいただきたい。主張はどうであれ、私とて管理者です。龍脈の暴走なんていう大事に手をこまねいているわけにはいきません!」
「――そういうことだ」
不意に反対側からも別の声がする。
「左慈、お主まで……」
「ふん。我々保守派は、北郷一刀の外史分裂を招いた負い目がある。その貸しの一つを返すとなれば、仕方がない」
「『上』の指示でもあるのですよ。今回のケース、貂蝉は事前に相談していたそうですからね。いざとなれば手を貸せ――そういう指示です」
「我々はこの件に関してのみ、力の封印を限定解除できる措置が取られている。それほどの事態だ。お前一人で収められるものか」
「お主ら……」
卑弥呼にとって見れば、これ以上の援軍はない。
なにしろこの二人は、本来ならば卑弥呼と貂蝉に匹敵する力を持っている。
手助けとしては何よりも心強い人物だった。
その証拠に目の前の『何か』の勢いは見るからに衰えていく。
破裂寸前だった卑弥呼の腕は、侵食していた疼きと共に、まさしく『憑き物が落ちた』かの様に収まっていった。
「……しかし、それでは貂蝉は最初から儂の言を信じておらんかったということかのう?」
「知りませんよ、そんなこと。バケ
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