月光校庭のエクスかリバー 第一話
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だよ」
と。
□□□◆◆◆□□□
カキーンッ! と、ボールがバットに当たる、軽快な音が鳴った。そのボールは、高く晴天に舞い上がり、一誠の近くへと落ちていく。
「オーライ、オーライ」
一誠の手にはめられたクラブに、ボールがすっぽりと収まった。
「ナイスキャッチよ! イッセー!」
リアスが一誠に声を掛ける。
そして、二個目のボールを手に取り、アーシアに向かって打つ。ボールの速さは大した事は無いが、ボールはアーシアの股を抜け、ライトの守備位置まで飛んでいった。
「あぁっ! む、難しいですね。野球は……」
まぁ、仕方ないだろうと思い。特には口に出さないリアスだった。――すると、聞こえてきたのは、豪快にミットへとボールが収まった音だった。
そちらのほうに目を向けると、そこには投球フォームに入った朧と、それに身構えるヤトの姿。
それは、とても鮮やかで美しいフォームだった。
見学していたいくつかのギャラリーたちも、静かに息を止める。
朧は、ミットを高くあげ、身体をひねる。そのままの勢いでボールを振りかぶって――投げた。
聞こえたのはミットの音――次いで、ボールが空気を裂く音だった。
それは、つまり朧の投げたボールが音速を超えたということなのだが、さきほどの美しすぎるほどに芸術的な投球に目を奪われたギャラリーは、うっとりとした表情で朧を見つめる。
「ふむ、難しいな、ボールを投げる力加減は」
「まぁ、仕方ないよ。父上」
実際のところ、朧が本気を出してボールを投げれば、地球を数十数周回する程度なのだが、その前にボールが摩擦で燃え尽きてしまう。
最初の投球では、実際にそうなった。
リアスは、溜息を一つ吐き、木場に向かってボールを打つ。
高々と、飛び上がったボールは、木場の近くまで飛び、そのまま木場の頭へと吸い込まれていった。
「おーいッ! 木場ッ! しっかりしろよ!」
「……あっ、ごめん」
そのまま、ボールを拾い、ぎこちなく投げ返す。
「どうしたの祐斗? ぼけっとして。あなたらしくないわよ?」
「すいません。大丈夫です」
つい最近の木場は、いつもこんな感じだった。きっかけは、おそらくあのアルバムだろうが。
それを見た朧は、ニヤリと笑い、ボールを投げる。
その球は、いまだに音を追い越したままだったが。
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