第二章
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我怖いわよ」
「そうそう、それそれ」
会話がさらに続けられていく。
「あの人怪我してるんだった」
「今更何言ってるのよ、あんた」
話がかなりぼけたものになっていた。
「あの人怪我してるじゃない」
「ああ、そうだったわね」
「そうよ。そこ要チェックよ」
あらためてそこが言われる。
「あの人それで今ああやって頑張ってるのよ」
「頑張ってるわね、確かに」
それは彼女達もわかる。今さっき話していたことすら忘れているような他愛もない会話であってもだ。それでも話されていくのだった。
「復帰して欲しいわね、本当に」
「そうそう、特にあの金満チームに勝ちまくって欲しいわ」
「私あのチーム大嫌い」
「私も」
「私もよ」
彼女達もあるチームが嫌いなようである。急に話がそちらに向かう。
「好き勝手ばかりしてお金で選手掻き集めて」
「それで優勝できないんだから無様よねえ」
「本当、そうよね」
そのチームに関する話が続く。
「何が球界の盟主なんだか」
「喪主でしょ」
「常勝球団じゃなくて嘲笑球団」
こうまで言う。五人が五人共そのチームを心から嫌っているのがわかる。
「何をやっても昔の栄光は戻らないのにね」
「馬鹿よねえ、本当に」
「けれどその馬鹿球団を倒してくれるのがいいのよね」
「そうそう」
また話は赤藤に関するものに戻った。取り止めがないが野球の話なのは間違いがなかった。
「本当に今年もね。頑張って欲しいわよね」
「そうよね」
女子高生達はそんな話をしていた。赤藤はその取り止めのない話を横耳で聞きながら走り続けている。一旦予定のコースを走り終えて川辺の土手に座って休む。するとその上の道に自転車が駆けて来た。
「んっ!?」
その自転車に乗っていたのはあの少女だった。髪の長いあの。今度は彼に顔を向けてきていて。自然と目と目が合ったのだった。
「君は」
「あんた、たしか」
向こうもそれを受けて自転車を止めてきた。そのうえで彼に声をかけてきたのだった。
「プロ野球選手の」
「ああ、赤藤さ」
自分を見下ろすその少女に対して述べた。
「赤藤雅夫。名前は知ってるよな」
「一応はね」
少女はぶっきらぼうに言葉を返してきた。言葉を返しながら自転車を止めて赤藤の横に下りてきている。見れば上は灰色のパーカーに下は青いジーンズとスニーカー、ラフな格好だった。
「最多勝やら何やら随分手に入れてるらしいな」
「まあな」
彼もそれは否定しなかった。
「今はちょっとあれだがな」
「ああ、怪我したんだったな」
少女の方からそれを言ってきた。
「それで今はリハビリか」
「まあそんなところさ。トレーニングだがな」
「随分大変だね」
赤藤の横に立ったまま言葉をかけてきたのだった。
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