お酒だけはダメです天敵です。※
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誰も居ない静かな教室。
窓からは赤い夕日の光が差し込み、黒板や雑然とした机を柔らかに照らし出していた。
ふと視線を下げれば学生服を着た自分に気づく。
懐かしい――そんな思いが脳裏を掠め、すぐに消えていく。
毎日着てる物なんだから、懐かしいと思うのは不自然だ。
『――隆也』
穏やかな声で名前を呼ばれ顔を上げる。
誰も居ないと思っていた黒板の前に一人の男性――『先生』が立っていた。
『先生……』
『こっちに、おいで?』
僕は唇をキュッと引き結び、のろのろと『先生』の下へ向かう。
――そう、『先生』に逆らうことは、許されないのだ。
悪いのは、僕だから――。
『さぁ、教えた通りにやってごらん』
『はい――先生』
僕は先生の首に腕を回し、そっと瞳を閉じた。
そして――
○ ● ○
「んう!?」
崩れ落ちた椎名を抱きとめた直後、首に腕を回されて深く口付けられ、山口は目を白黒させた。
「きゃーー! 山口先生×椎名先生のリバきたーー! ずるいです、ずるいです! 椎名先生のちゅー私も狙ってたのにーー!」
焦点の合っていない椎名を引き剥がし、山口はピロリン♪ピロリン♪と写真を撮りまくる腐った吉岡のスマホを取り上げた。
「何撮ってるんですか! 肖像権の侵害ですよ! 削除しますからね!」
「やだー返してくださいよぉ!」
山田は、完全に酔っ払った吉岡をあしらいながら片手で彼女のスマホを操作しつつ、今度は吉岡の方へふらふら近づき始めた椎名を引っぱって抱き込み、被害の拡大を阻止した。
その手腕は既に熟練の領域に達しつつある。
「ふぇ? せんせぇー?」
「あー! もー止めなくて良いのにー!」
「吉岡先生は女性なんだからそういうわけにもいかんでしょ!」
呆れたように言う山口に、校長がハッハッハと育ち過ぎた腹を揺らして笑いながら近づいた。
「いやーやっぱり飲んじゃいましたか椎名先生! 毎回飲まない飲まないと言いつつ何だかんだ一口は飲んじゃいますからね〜! 山口先生もすっかり世話係が板についてきましたな〜!」
そう、椎名本人は知らないが、彼は酒に酔うと何故かキス魔と化するのだ。
その世話は、当然女性がするわけにもいかず最初の飲み会の時から同期の山口がしており、もはやそれが恒例となっていた。
「今回は私のお酒と間違えたんですよ。 こうなるともう仕方ないですから、家まで送ってきます」
「いつも悪いねぇ! それじゃあ気をつけて帰んなさいよ!」
「ええ、そんじゃあ、皆さん悪いですけどお先しますよ」
「お疲れー!」
「また月曜日ー」
そんな声に送られて山口は椎名を担ぎ居酒屋から出た。
「でも、キス魔にな
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