第五十二話 文化祭のはじまりその十一
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「迫力満点よ」
「確かに自分でも鏡見てびっくりしたけれど」
「そうでしょ、本当に怖いから」
「そんなになのね」
「その迫力ならね」
それこそ、というのだ。
「皆が驚くのも当然よ」
「それはいいことよね」
「お化け屋敷としてはね」
まさにだ、大当たりだというのだ。
「いいわよ」
「そうなのね、そういえばあんたも」
琴乃もだ、雪女の娘を見る。彼女はというと。
「凄いわよ」
「迫力ある?」
「顔真っ白でしか髪を振り乱してるから」
そうした外見だからだというのだ。
「暗がりの中で見たらね」
「迫力あるのね」
「ええ、相当にね」
そうだというのだ、彼女もまた。
「あと目の前もね」
「ああ、晒し首ね」
雪女の娘も前を見る、そのわざと物凄い顔でメイクまでしている男子生徒達をだ。見れば髪もちゃんと落ち武者のものだ。
「あれは確かにね」
「時代劇でもあそこまでのはね」
「今時ないわよね」
「何か物凄く悪いことして打ち首になって」
「獄門になってね」
江戸時代の刑罰だ、尚こうした刑罰はどの国にもあったもので日本はまだあっさりと打ち首にされるだけましだったかも知れない。
「もう世の中を怨んで怨んでっていうか」
「そういう顔よね」
「しかも人が傍に来たら叫ぶし」
「最高よね」
「ああ、そうだろ」
「凄く怖いだろ」
その首達も応えてくる、傍から見れば本当に生首が喋っている様に見える。
「だから俺達もこうしてな」
「凝ってるんだよ」
「それで皆怖がってくれるからな」
「凄く楽しいぜ」
「いや、本当に生首に見えるわ」
琴乃も彼等にこう返す。
「というか怨みを飲んで首だけになっても生きてるっていうか」
「そんな感じだよな」
「いいよな」
「いいっていうか不気味よ」
怖くかつ、というのだ。
「夢に見そうよ」
「そこまで怖がらせてこそのお化け屋敷っていうしな」
「だから俺達も嬉しいよ」
「これからまた驚かせてやるか」
「びっくりさせてやるぜ」
彼等はけたけたと笑いながら話す、すっかりなりきっている。
「首だけって迫力あるからな」
「単純だけれどな」
「確かに生首って迫力あるわよね」
雪女の娘もこう返す。
「首だけだと」
「そうだよな、首から下がないだけでな」
「凄い怖いだろ」
「桜田門外の変もそうだったのかしら」
当時の大老井伊直弼が江戸城桜田門前で襲われその首を奪われた事件だ、雪の朝の登城前の出来事である。
「井伊直弼さんもだったから」
「ああ、あの人撃たれて突かれてそっからだったよな」
「首獲られたんだよな」
「そう、首を獲られてね」
死んだのだ、安政の大獄で多くの者を強引に打ち首にした報いであろうか。少なくともこの人物を擁護す
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