第五十二話 文化祭のはじまりその七
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「結構疲れ溜まってますよね」
「飲んで、ですから」
「ヒトラーはお酒は飲まなかったけれど」
ここでまた言う里香だった。
「それでも働き詰めで」
「ブラック企業みたいだな」
美優はこう言った。
「それじゃあ」
「独裁者はそうみたいなの」
「仕事が多いんだな」
「権限が集まるから」
全てだ、独裁者は国家の権限を全て集めるのだ。それは仕事も全て集まるということでもあるのだ。
「その分ね」
「仕事も多くなるのね」
「そうなのね」
「だから独裁者はね」
どうしてもだというのだ。
「必然的に忙しくなるのよ」
「だからヒトラーもなの」
「忙しかったの」
「スターリンもムッソリーニもよ」
同時代の二人の独裁者達もだというのだ。
「特にスターリンもね」
「忙しかったのね」
「仕事が多かったのね」
「そうよ、だから独裁者は働き者でないと駄目なのよ」
権力を求めるからには代償がある、それが多忙だというのだ。
「スターリンだって一日四時間程しか寝てなかったそうよ」
「そんな生活してたら駄目よ」
部長はスターリンの生活についても言った。
「身体壊すわよ」
「そうですよね」
「ええ、というか独裁者って」
部長が言うには。
「働き者でないとなれないのがね」
「お嫌ですか」
「私には無理ね」
右手をぱっぱっ、と振っての言葉だ。
「私働くの嫌いだから」
「だからですか」
「部長さんは独裁者になれないんですね」
「一人が背負い込むとか駄目よ」
仕事を、というのだ。
「部長と副部長、書記でね」
「三人で、ですか」
「職務分担ですね」
「そういうことですよね」
「部長さんは」
「そう、私は絶対に独裁者にならないから」
そうした存在には絶対に、というのだ。
「ヒトラーやスターリンにはね」
「つまり大粛清とかもですね」
景子はこれまた独裁者がよくやることを言葉に出した。
「それないんですね」
「部活で大粛清って何よ」
「時々気に入らない人追い出すとかいうお話がありますよ」
「それ部活でやったらアウトじゃない」
「アウトですか」
「個人の好き嫌いを部活動に入れないの」
私事、それはというのだ。
「部活は公じゃない」
「だからですか」
「この部活にはいないけれど私だって嫌いな奴はいるから」
人間ならば好き嫌いがある、それで部長にもそうした相手がいることもまた紛れもない事実だというのだ。
「そうした相手がいたら無視するわ」
「けれど追い出しとかはですか」
「無視するだけよ」
これが部長の嫌いな相手へのやり方だというのだ。
「それにね」
「それに?」
「相手を追い出す人間は自分も追い出されるわよ」
部長はこのことは真剣に言った。
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