幕間+コーデリア:王女のワルツ
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る段階に入ると、舞踊がスピードを上げたり回転を早めたりする事がある。その上、男性の手の内で回転しながら他の舞踊者と交錯したり、逆時計回りに円を展開したりと大忙しだ。それまでの静穏な様とは一変するがゆえにミスが出やすい場所であった。かくいうコーデリアもここを不得手としており、ステップが一歩か二歩、余計に多くなってしまい、全体のリズムがずれるような感覚に陥らんとしていた。そこへ救いの声を掛けたのは、近くを通りかかったシンシアであった。
「王女様。ペースが上がっておいでですよ。もう少しリラックスを」
「・・・そうでしたか。気遣いを有難う、シンシア」
「ふふ。とてもハンサムな方ですわね。後で一曲、私と踊っていただきたい程ですわ、トニー様?」
「うぐぐっ・・・」
離れていく彼女の背を、『トニー』ならぬトニアは、光栄であるのか恥ずかしいのか何だかよく分からぬ表情で見送っていた。その顔を、歌を終えて待機していたユラは確りと見詰めていた。
「トニア様・・・あんなに複雑そうな顔をしなくてもいいのに」
「トニア?それは一体誰の事だい?」
「何でもありません事よ。それよりも御覧になって。私の友人の優雅な踊りを・・・」
ユラが友人と話す一方で、コーデリアはペアの表情のしこりに気付き、それを諌めんと『彼』の肩口で囁いた。
「ほらトニー。顔が引き攣っていますよ。緊張されてはいけません」
「・・・王女様。これも一つの修行なのでしょうか。女装をして舞踊を披露し、これがばれぬよう仮面を飾り続けるのは」
「ええ。騎士としての誉れ高き修行です。精神を鍛え、より凛々しく、より華麗な騎士となるための、一つの登竜門ですわ」
「・・・分かりました。もう私は、迷いません」
開き直るまでに随分と時間がかかったものだ。コーデリアは相方の成長を喜ばしく感じながら、ドレスのレースを持ってたおやかに足を運んでいく。
王座にて若者らを感慨深く見守っていた国王に、冷厳な執政長官であるレイモンドは囁く。こんな華やかな場所であるのに、彼の視線は戦場の軍師のごとく冷え込み、王女を恙なくリードする若者へと注がれていた。
「あの赤髪の青年、見事に王女殿下をリードしておりますな。足運びに全く澱みがない・・・隙が無い、といった方が正確でしょうか。陛下、あの若者については御存知ですか?」
「おや。そなたは分からぬのか、レイモンド」
「はっ・・・いかんせん、初めて見る顔ですので。どこかの家の新しい養子か何かかもしれませんゆえ、後で調べようと考えておるのですが」
「ふむ。そなたもまだまだ青いな」
「は?・・・陛下は御存知で?」
「さて、どうであろうな。何はともあれ、ほれ、我が愛しき娘の晴れ姿を愉しもうではないか」
抑揚のない言葉にレイモンドはど
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