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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:王女のワルツ
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を責めたわけではありませんよ?ただその貴族の男とやらにむかついただけで・・・」
「はいはい、分かりましたから。そんなに焦っては駄目ですよ、トニア」

 不承不承といった感じにトニアは改めて己の衣装を見遣る。見事なまでの白く清らかな、男性用の礼服であった。さらしを巻いている御蔭で人から違和感を持たれない程度の体躯となり、自慢の赤髪はオールバックに纏められている。また、王女付の侍従による華麗な手さばきにより中性的な顔付となる化粧を施され、今のトニアは魅惑の男子ともいうべき存在となっていた。

「ここまでする必要があります?化粧だってした事も無いのに」
「あら?意外とそういうのには疎いのですね、トニア。私よりも経験が豊富な気がしていたのですが」
「それは間違いです!私なんて、従騎士の時に同じ従騎士の男に片思いしたくらいですよ。一回だけです、他人を本気で好きになったのは」
「そうなのですか・・・その方とは上手くいったのですか?」
「告白はしたのですが、その人、ホモでして・・・」
「おぅ・・・」

 居た堪れない返しをしたコーデリアの衣装もかなりのものだ。さすがは王族とだけあって誰よりも清楚で、美麗な衣装である。髪の色と同調する淡い青色のドレスは宛ら海の妖精の雰囲気を醸しており、コーデリアの慈悲深いイメージを向上させるものである。加えて背中が開いているために女性としての魅力も失わせておらず、伸縮性のあるスカートは踊りの妨げになる事も無さそうだ。トニアは相方の外見を観察し、その可憐さは他の貴族よりも頭一つ抜き出ているものだと確信する。
 大扉の向こうから聞こえてくる女性の歌声に、コーデリアは暫し聞き惚れた様子であった。歌は今、終盤に向かうソロパートに入っており、聖歌隊の旗手がその部分を美しく仕上げていた。

「綺麗な歌声ですね・・・流石は歴代最年少で聖歌隊の旗手になっただけある・・・。歌が終わりましたら、いよいよ私達の出番です。準備はいいですか、トニア?・・・いえ、『トニー』?」
「・・・はい、覚悟を決めました。今宵に限り、私は女を捨て、凛々しき一人の男子となります」
「その意気です!」

 歌がフィナーレへと入る。神聖さを損なわせない静かなパートで、リュートも自らを抑えて奏でられる。最後はリュートの音が消えて、その後男女の斉唱が二度続き、歌は終わりを告げた。気品のある拍手が鳴り響いて彼らを湛え、人々のざわめきが戻っていく。
 それらが落ち着かんとした時、執政長官の声が舞踊隊の下へと届いた。

『続きましては、舞踊隊によるワルツで御座います。皆様、大扉の方を御覧ください』
「行きましょう!」

 衛兵が扉を開けて、コーデリアを先導として若者らは歩いていく。ペア同士、近い方の手を取り合う形だ。道を作る貴族らの間を通り、中央
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