幕間+コーデリア:王女のワルツ
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い、トニアにここに招いた理由を説明した。それを告げられたトニアの表情はまさしく、鳩に豆鉄砲を食らわせたような呆けたものであり、令嬢らは堪らないように笑みを零したのであった。
ーーーキャロル、当日ーーー
この日、宮廷の大広間には絢爛としながらも温かなムードが漂っていた。それは我が子の成長を見守る親達の眼差しから、そして王国の期待の星を認める大人達の笑みから顕著に窺える。壇上の高みに座す国王、ニムル=サリヴァンは、眼下に肩を並べて美しい歌声を披露する聖歌隊を見詰めていた。豊かな生活を送っているためか健康優良な美男美女がそろい踏みであり、緊張で顔に紅が差しているのが若々しさを際立たせる。この後に舞踊を控えているためか、司祭や修道女のような格式ばった衣装ではなく、貴族らしい礼服とドレスを召していた。
会場の反応を見るに、聖歌隊の歌は満足できるものであったらしい。聖歌隊の旗手であるユラ=ミシェランはその事に一先ず満足しつつも、気を引き締めて皆をリードしていく。彼女等が歌っているのは神言教の聖歌の一つである『主神の慈悲』というもので、曲調はありきたりなグレゴリオ聖歌である。パイプオルガンの代わりにリュート弾きがメロディーを奏で、その大任を全うするのはオレリア=デュジャルダンであった。踊りや歌といったジャンルに比べて楽器の演奏というのは若者には難しいらしく、実際に弦楽隊自体も他の隊より数が二倍ほど少ない。にも関わらず歌声に負けぬほど美しさと神聖さを合わせた音を奏でられるのは、偏にオレリアの類稀な一芸によるものであり、それが歌と合わさり、大広間には美しいハーモニーが響き渡っていた。
彼女等が晴れ舞台に見事な花を咲かせる一方で、大扉の前に控えている舞踊組は一様に緊張した面持ちであった。踊りは貴族にとって当然の嗜み。ゆえに、どの組よりも厳しい視線で見られるのは必定であると彼らは考えていたのだ。仮にそうでなくとも国王や貴族らが一堂に会する場に出るのは緊張して当然の事であった。互いに衣装の確認をしたり、そわそわとしてきょろきょろと辺りを見る様は微笑ましいもので、衛兵はそれを見て自らの若さ溢れる時代を思い起こしていた。
一方で、例外もまた存在している。普段から踊り慣れている者達にとって、或は爵位持ちの貴族と接する事が多い者達にとっては大した気苦労に放っていないようである。それは舞踊隊の先頭に立っている、コーデリアとトニアのペアであった。
「あの、王女様・・・このような事をする必要があるのでしょうか?」
「そうしなければ駄目なんです。私が知りもしない、今日初めて会うであろうどこかの貴族の息子と、手を取って身体を近づけて、会場の真ん中で踊る姿を見たいのですか?」
「そのような不快なものは見たくはありませんが・・・いや、今のはコーデリア様
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