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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:王女のワルツ
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に居るのだから」
「・・・それは、誰の言葉ですか?」
「そなたの姉君の言葉だ。ちょうど、そなたと同じ歳に言ったよ」

 コーデリアは息を詰まらせて、複雑な表情で庭園の花を見る。見事に咲く一輪の花は、昔日に彼女の姉が愛した赤紫の花弁を湛えていた。
 ニムルは娘の横顔に、姉に対する反抗心、そして羨望を感じ取る。多感な時期なのだろう、姉を持ち出すだけで彼女はこうも反応し、心を揺り動かす。ニムルは娘の横顔に、今は亡き愛する妻のそれに似たものを見ながら静かに告げた。

「あまり気負わぬ事だ。そなたはまだ若い。よく悩んで、後に悔む事のないように、よく生きなさい。私は悔いた事が無い。そなたの姉を帝国に嫁がせた事も。そなたをこの国で育てた事も」

 その言葉を機として、コーデリアとニムルの間に静謐が生まれた。秋の和やかな風に当てられて二人のさらさらとした髪が靡く。小鳥が枝に留まって、ちうちうと鳴きながら毛繕いを始めた。
 ニムルがゆっくりと紅茶を啜った後、コーデリアは決心したように言う。

「お父様。今度のキャロルですが、私は踊りを披露させていただきます」
「・・・そうか。よく決心してくれた。しかし大丈夫か?昔ブランチャードの娘が教えてくれたとはいえ・・・」
「ええ。彼女にはよくしていただきました。でも心配だと仰りたいのでしょう?大丈夫です。知り合いに当たって、協力してくれるよう頼んでみますから」
「・・・そうか。それならば心配は要らんな。・・・紅茶を有難う、コーデリア。そなたと話が出来て良かった」
「お父様のためですから」

 ニムルはソーサーにカップを置く。黄金色の湖面が全て嚥下されたことを知ると、コーデリアは満足そうに笑みを浮かべた。めきめきと上がる茶の腕前と同じように、踊りも上手くなればいいなと、彼女は思った。



ーーー二日後、正午過ぎーーー



 宮廷のとある一室にて、リズムを取った手拍子が響いていた。それに合わせて二人の少女が、互いに手を取り合って足を運んでいる。片や流麗な舞を目指そうとして四苦八苦するコーデリアと、相手が転ばぬように巧みにリードする貴族の令嬢、シンシア=ロックウェルであった。傍にはシンシアの良き友人である、ユラ=ミシェラン、オレリア=デュジャルダンの姿があり、二人とも真剣な眼差しをしながら踊りを見詰めていた。

「王女様、もっと肩の力を抜いて下さい。輪を描くようにするのです。一歩一歩を確実に。どんなに遅くても良いですから」
「は、はい、オレリアさん」
「シンシアさん、あなたもう少しペースを落としなさいな。王女様に無理を押し付けては駄目ですわよ?」
「もう、あなたにだけは言われたくはないわ、ユラさん。さぁ、王女様。もう少しで終わりですわよ」

 コーデリアは気を引き締め直し、
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