焦がれる夏
参拾参 舞い上がるたま
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第三十三話
いつもはホンマにカマトトでな、トボけたようなビッミョーっな笑いばっか浮かべてるセンセがなぁ、これまでの試合も涼しい顔して乗り切ってきたセンセがなぁ、今は力を振り絞って投げてんねん。目ェ剥いて、歯ぁ食いしばって投げてんねん。
それに比べてワイは何や。ホンマに何もしてへんわ。アウトになってばっかりや。
何でや。何でワイ、こんなアカンねん…
センセと同じ練習、ワイもしてきたで?
何でワイはこんなに情けないんや!
別にセンセに悪いとか、そんなんとちゃうからな!センセの好投に応えな申し訳ないとか、そんなんとちゃう。いや、ちゃう事ないんやけど…
何て言うか…
こんな情けない自分を、ワイは許されへんのや!
ワイは何よりも自分を裏切りたないねん!
見とれよ…
ワイはただで転ぶ気ないぞ!
男の意地っちゅーもんを見せたるわい!
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真司と琢磨。
両右腕がマウンドに上がり、ネルフと是礼の膠着が続く。
決勝戦のマウンド。
球場の視線が、思いが、祈りが集まるその場所で2人は躍動する。
「あぁぁああああああ」
掠れた雄叫びを上げ、真司は細身の体を存分にしならせながら荒々しく右腕を振る。
まるで生命を授かったように力がみなぎる真っ直ぐが、是礼打線を圧倒し、バッタバッタと斬って捨てる。
「おっし!」
琢磨はテンポ良く、コンパクトな投球フォームから飄々と投げ込む。まるで背負うものが無いかのようにあっさりとした態度でポンポン投げ込むその球は思いの他にキレがあり、ネルフ打線を沈黙させていた。
試合は、延長戦に入っていた。
ーーーーーーーーーーーーー
<10回の裏、是礼学館の攻撃は、3番センター東雲君>
7回から打者一巡、9人連続でアウトになっている是礼打線。うち7人が三振。真司のホップするような伸びを持つ速球に三振の山を築かれていた。そして10回裏、クリーンアップから始まる打順に期待を託す。
「「オーオーオー オオオー
(かっせかっせかっせかっせ東雲ー!)
オーオーオー オオ
(大きな声でー!)
しーののめー!」」
是礼応援席では野球部員がコミカルな踊りを見せつけながら「ドラクエV」が流れる。
初回から変わらずキレのあるダンスで選手を鼓舞するチアリーダーの、ノースリーブから覗く二の腕は真っ赤に日焼けし、顔から汗が飛び散る。
(もう一回りか。真っ直ぐ一本でこげに抑えられるとはの。)
是礼の打者にもとより緩みなどはない。どの打者も必死に真司の真っ直ぐに食らいついたが、その上をいく真司の全力投球であった。
(このホンモノの碇からはまだノーヒットじゃけ
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