焦がれる夏
参拾参 舞い上がるたま
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、真司のこの気迫は、是礼を圧倒している。
何が真司をそうさせているのだろうか?
加持は分からない。
「俺は、こうして扇いでやることしかできない、か」
俯く真司を見ながら、加持は独りごちた。
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<11回の裏、ネルフ学園の攻撃は、3番レフト日向君>
11回の裏のネルフの攻撃は3番の日向から。
準決勝から当たりが止まっているだけに、ここは一本ヒットを出しておきたい。
次の打者は今日も2安打の頼れる4番、剣崎だ。
(クリーンアップからか)
そのネルフ打線に立ちはだかるのが、今日大会初登板、是礼の主将、伊吹琢磨。
速いテンポでどんどん投げ込んでいく。
パシィーン!
カキッ!
真っ直ぐ二球であっさりと追い込むと、外の大きく曲がるスライダーで一球外す。
そして4球目、リリースの瞬間少しボールが浮いた。
(甘い!)
手を出した日向は、しかし手元まで来ずに曲がり落ちる緩い軌道に大きく空振りした。
マウンド上で、琢磨がニヤッと笑う。
(カーブ〜〜!?スライダーだけじゃなかったのかよ変化球は!)
尻もちをついた日向は、ズレたメガネの奥から琢磨を睨む。
勝ち越しを期したこの回の先頭打者も、あっさりと三振に斬って捨てられた。
(…何だか、イイ感じだな)
琢磨はマウンド上で、これまでにないような感覚を味わっていた。受け身で球を待つ野手には感じられない、試合の支配感。
自分で試合を作っていける。
(去年の夏に主将になってから、どうしたらチームを引っ張れるか、ずっと考えてきた。)
マウンドから後ろを振り返ると、7人の野手がいる。走り込みの度に設定タイムをオーバーしてペナルティを課されてきた分田、後輩に馬鹿にされながらも黙々とファウルを打つ練習をしてきた熊野、守備が課題で毎日コーチに個人ノックを課されては倒れていた最上、先輩にすぐ噛み付いて幾度となくシバかれてきた東雲、弱気なプレーが目立ち隅に埋れがちだった筑摩、同期の姿が見える。
(今なら、自信持って言える)
琢磨は打者の方に向き直った。
(お前ら、俺の背中をよーく見とけ!)
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<4番センター剣崎君>
日向に続いて打席に入るのは剣崎。
今日は満塁ホームランを含む2安打。
是礼先発の高雄を降板させる一打も放ち、今日湿り気味のネルフ打線の中で唯一当たっている。
絶対的4番打者の登場に、ネルフ応援席は期待を託す。
「今日大活躍のオオカミ先輩のお出ましだよォー!!もう一発放り込んでもらおーっ!応援で打たせるよォー!」
真理が応援席の雰囲気を煽る。
真理は分かっていた。
真司
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