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行って参ります
第二章

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第二章

 そこに杉浦がいる。彼は帽子を右手に持ち左手に旗を持ってだ。夜の大阪球場のグラウンドを回っていく。そうしてなのだった。
 大阪のファン達の歓声、別れの言葉を受けている。微笑みで受けていたのだ。
「九州でも頑張れや!」
「応援するからな!」
「ホークスはホークスや!」
「頑張るんやぞ!」
 こうだ。熱い声援を送るのだった。そして杉浦もだ。
 彼等に対してだ。深々と一礼してだ。こう告げた。
「行って参ります!」 
 こう別れの挨拶を述べたのだった。これが南海ホークスの幕引きだった。今の福岡ソフトバンクホークスはだ。こうした歴史があるのだ。
 その南海ホークスの最後の試合、そして大阪を後にする時にかつて南海を日本一に導いた男が務めた。これは南海にとって最高の幸せだった。
 もう大阪球場もなく南海ホークスは今では福岡ソフトバンクホークスとなっている。かつて大阪にいたということは歴史の話になろうとしている。杉浦忠も残念なことに今では泉下の人である。彼のその活躍も立派な人柄も語り継がれるものになってしまっている。しかしそれでもだ。
 南海ホークスというチームが存在し大阪球場にいた。そして最後の監督である杉浦がこう言って別れを告げ九州に入ったこと、このことは紛れもない事実である。最早過去のことになってしまったことであるがこのことを少しでも多くの人が知ってくれること、そして思い出してくれることができればそれは南海、今のソフトバンクにとってももうなくなってしまっている大阪球場にとってもあちらの世界で楽しく野球をやっているであろう杉浦にとっても幸いなことではないかと思う。こう考えこの話を紹介させてもらうこととした。願わくばこの話が野球を愛する人達の心に永遠に残らんことを。


行って参ります   完


                2011・3・20

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