第41話 トモダチだから
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「咲。ちょっといい?」
休憩に入るなり、ヘキサが咲に声をかけた。
答えると、ふたりきりで話したいと言われたので、出入口のガラス戸の外に出た。建物の中とはいえ、階段は空気が冷たい。
「なに?」
「昨日のことなんだけど。上の兄さんが“シャルモン”に行ったの。あのパティシエの人、カンユウしに」
「パティシエの人って……ブラーボの人? カンユウって?」
「兄さん以外のヒケンシャ……つまり咲たちのミガラを押さえるつもりなのよ、兄さんは。貴兄さんがちょくせつ出向いてなんて。本気、なんだと思う」
咲は光実と共に一度あのライダーと戦った。
紘汰が怯えるのも分かった、光実が慎重になるのも分かった。それだけ白いアーマードライダーは強く、容赦がなかった。
咲がとっさに特攻しなければ自分も光実もあの森の屍だったかもしれない。考えて、咲は知らず両肩を抱いた。
「ホンキであたしたちアーマードライダーをつぶしに来る――」
「咲……」
クリスマスゲームが終わってから、咲とヘキサ、それに紘汰と光実は多くの情報を共有した。
詰まる所、彼女たちは知りすぎた。
知らない所でファイリングされ管理されていた事実、ヘルヘイムの森、ユグドラシル・コーポレーションの暗躍――
正直、小学生には重すぎる話だから、咲とヘキサは降りていいと紘汰・光実からは言われた。
だが、咲たちは降りる気などみじんもなかった。こうも管理物扱いされては。咲にも小さいながらプライドがある。
「ヘキサ。いざって時は、あたしのことなんて知らないってお兄さんに言わなきゃダメよ。あの人、コドモ相手でも手かげんしなさそうだから」
「咲! 何てこと言うの!」
ヘキサは咲の手を両手で掴んだ。
「貴虎兄さんが咲を傷つけるっていうなら、わたしは迷わず兄さんの前でユグドラシル・タワーからとびおりて死んでやるわ」
「ヘキサっ!!」
「本気よ!! わたしだって、戦えなくても、命をかけるくらいはできるんだからっ……おねがいよ……無関係なフリなんて、フリでもつらいよぉ……!」
泣き出したヘキサを、咲は恐々と抱き締めた。ヘキサは咲の肩に頭を押しつけてしゃくり上げた。
「そう、だね。あたしはヘキサの親友で、ヘキサはあたしの親友、だもんね。死ぬまでずっとトモダチだもんね」
「そう、よ。だから、わたし、ウソでも咲のこと『知らない』なんて言わない。それで貴兄さんがどんなに怒ったって」
「うん。ヘキサ、大好き」
「わたしも咲、大好きよ」
指を絡めて手を繋ぎ合い、二人の少女は向かい合わせに泣き笑いの顔を向け合った。
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