第二章
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第二章
「それはね」
「そうなの」
「それよりもね」
そしてまた言った。
「御礼を言うのは僕の方だよ」
「貴方が?」
「そう、君がいてくれて励ましてくれたから」
だからだと。彼女にまた返した。
「それでなんだよ」
「そうだったの」
「君がいてくれてどれだけよかったか」
そう話し続けてだ。僕はまた言った。
「おかげでここまで来れたよ。君のお陰だよ」
「私は別に」
「僕はかなり迷ったし」
ここに来るまでにだった。何度も諦めかけた。もう駄目かと思ったこともあった。残業も幾らでもしたし会社に泊まり込んでなんていうのもざらだった。殆ど寝ないで仕事もした。そうして何とか実績をあげて確かなものにしてから。僕はまた彼女の家に行った。
最初に行った時から三年経っていた。僕は駆け出しから会社のホープになっていた。努力したつもりだった。それは事実だ。
そうして家に行って彼女と一緒に言った。結婚したいと。
すると目の前にいる岩石そのものの顔はそのままだったが。しっかりと言ってくれた。
「よかったわね、あの時は」
「夢の様だったよ」
僕はその時のことも思い出していた。忘れることのできないものだった。
「本当にね」
「お父さんも認めてくれて」
「それでもかなり残念そうだったけれどね」
「それでも。認めてくれたわ」
微笑んで僕に言ってくれた。
「長かったけれどね」
「三年ね。長かったね」
「とても長かったわ」
微笑んで僕に言ってくれた。
「物凄くね」
「僕もそう思うよ」
それは僕も同じだった。三年、一口に言えるけれどそこにあるものは途方もないものだった。それまでに色々なことがあった。
「けれどね」
「認めてくれたわね」
「そうだね。けれど」
「けれど」
「これで終わりじゃないね」
こう彼女に答えた。
「終わりじゃないからね」
「終わりじゃないのね」
「はじまりだよ」
僕は今のことがわかった。三年も必死に頑張ってきたけれどそれで終わりじゃない。このことが嫌になる程わかったのだった。
「はじまりなんだよ」
「はじまりなの」
「ずっと一緒にいよう」
彼女に対して言った。
「ずっとね。一緒にね」
「一緒に。ずっとなのね」
「折角果たせてもそれで潰れたりすることもあるし」
何年も受験勉強してやっと入学した大学で嫌なことがあって辞める、そんな話もある。その何年もの間に注いだ努力も根気もそうなってはどうなるのかなとも思う。少なくとも入学までに必死だったからそう簡単に、誰に何を言われても残らないと駄目なんじゃないかなとも思う。
「だからね。はじまりなんだ」
「はじまりだから」
「まずは一緒に行こう」
そっと手を差し出した。僕の方から。
「そしてずっと二人
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