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少年少女の戦極時代
第42話 咲と初瀬 @
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 初瀬亮二は追い詰められていた。

 街のどこに行っても上級インベスがいる。初瀬を威嚇する。それらのインベスから初瀬は逃げ続けていた。戦極ドライバーを失った彼には抗するすべがなかった。
 ――そのインベスが本当にそこにいるモノだったかは、彼には与り知れぬことである。

(どうしてこうなったんだっけ?)

 歩道橋の前まで来た初瀬は、膝に両手を突いて荒く呼吸する。

 戦極ドライバーが壊れたせいで、チームバロンとのインベスゲームには負け、ステージを奪われ、チームの仲間には見放されて。

 ダンスも仲間も居場所も失った彼が最後に頼ったのは力だった。

 だが、“ドルーパーズ”に行っても錠前ディーラーが来なくなったと言われ、新しいロックシードを手に入れる術さえ失った。


 初瀬亮二は追い詰められていた。

 顔を上げる――正面の街路樹の陰から、白いアーマードライダーが見ている。

「うわああッ!」

 歩道橋を駆け上がろうとした――その歩道橋の上にアーマードライダーブラーボがいた。

「ああああッッ!」

 初瀬はもつれた足でとにかく近くの高架下に駆け込んだ。

 体感温度の低く、人のいない高架下は、初瀬の頭を冷やすには充分だった。
 初瀬は鉄柱に背中を預けたままその場に座り込み、頭を抱え込んだ。

(ベルトがねえ、力がねえ俺じゃ、会った途端にやられる)

 もはや自分の命すら自分のものではない。どうやって生きていいのかさえ見失いかけた時だった。


「――だいじょうぶ?」


 頭に触れる小さな他人の体温。“敵”ではない。実家の弟妹が触れた時と同じ感覚だった。初瀬は勢いよく体を起こした。

 そこにいたのは、小さなビートライダーズのリーダー、室井咲だった。





「えっと、だいじょうぶ?」

 ダンススクールの帰り。重い報告で重くなった気分を変えたくて寄り道などしてみたら、レイドワイルドの初瀬亮二が走っている場面に行き会った。
 追いかけると、初瀬はまるで怯えているようだったので、頭をなでてみた。前にヘキサがこうしてくれたことがあったのだ。

「こわいことがあったの? だれかにいじめられた?」
「怖い、こと……?」

 呟くや、初瀬は突然後ずさった。鉄柱に背中をぶつけたのに気にならないようだ。咲ではなく、咲の後ろを見ている。
 咲はふり返ったが、高架下には誰もいない。

「ねえ、ほんとにどうしたの? なにが」

 近寄って再び手を伸べる。すると初瀬が急に咲の薄い両肩を掴んだ。

「何で…俺が怯えなきゃならねえんだよ、あんな奴らに…!」

 掴まれた肩は痛い。だが咲には振り解けなかった。体格的な理由ももちろんだが、まるで初瀬が泣
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