第三章
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第三章
目が真っ赤だった。けれどその時はそんなことにすら気付く余裕はなかった。
その部屋に来た。部屋の前の席に他の仲間達が集まっていた。皆いた。
「お友達ですか?」
若い看護婦が俺に声をかけてきた。
「ああ、そうだけどよ」
俺はそれに応えた。
「あいつは?」
「残念ですが」
看護婦は目をつぶって首を横に振った。
「ここに担ぎ込まれた時にはもう」
「おい、嘘だろ」
わかっていることだった。けれど俺は叫ばずにはいられなかった。
「あいつが、どうして死ぬんだよ」
「おい、止めとけ」
看護婦の首を掴もうとする俺を仲間達が止めた。
「仕方ないだろ、事故なんだけれど」
「けどよ」
「看護婦さんに言っても無駄だろ、落ち着けよ」
「・・・・・・ああ」
何度か言われてやっと落ち着いた。
「そうだな、すまねえ」
俺は看護婦に謝った。
「いえ、いいですけど。今は」
「わかってるよ。会えないんだな」
「はい。申し訳ありませんが」
「そうだよな、あいつにはもう」
俺は項垂れたまま呟いた。
「何で、何でだよお」
俺は叫んだ。
「これからって時によ、あいつ一人だけ」
言ってもどうにもならなかった。けど言うしかなかった。言わなきゃどうしても納得できなかった。俺は病院の廊下にうずくまった。そして泣いた。本当に心から泣いた。こんな泣き方をしたのは生まれてからはじめてだった。
あいつが逝ってからバンドも自然に皆遠のいた。俺もドラムだけはやっていたがそれも前みたいに燃えるとかそういうことはなくなっちまっていた。けれど続けるだけは続けていた。
「こんなんじゃ駄目だな」
そう思いながらもダラダラと時間だけが過ぎていった。バンドは遂に解散状態になり誰もクラブにも顔を出さなくなった。俺は一人このドラムを使ってくれる奴を探して東京に出た。それで何か掴めるかも知れないと思ったからだ。
最後にこの店のコーヒーを飲んだ。それで街を出た。その時もこうして煙草をふかしていた。
「あの」
ここで店の娘さんが俺に声をかけてきた。
「ん!?どうしたんだい」
俺は思い出から還って彼女に声をかけた。
「いえ、何か色々と考えておられるみたいだったんで」
「ちょっとね」
俺はそれに応えて薄く微笑んだ。
「昔のことを思い出してね」
「そうだったんですか」
「あの頃のことがね、今は懐かしいよ」
声も温かいものに自分で思えた。
「何か本当に遠い思い出だけどね」
何か声が優しくなっていた。
「ずっとここにいたんだよなあ」
俺は煙草を灰皿に置いて呟いた。
「打ち合わせとかはね。よく使わせてもらったよ」
「へえ」
「今はもう皆いないけどね。俺もちょっと戻っただけで」
「またすぐ出て行かれる
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