第三章
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んですね」
「ああ」
俺は頷いた。
「悪いけれどね。それじゃ」
煙草を消して金を置いた。
「機会があればまた来るから」
「はい」
俺は店を後にした。そしてそのまままたあの橋の下を通った。
見ればあの時の落書きがまだ残っていた。右手にはさっき見た落書きが。そして左手にはあいつが死んだ時に書いたやつだ。赤いスプレーで殴り書きしてある。
「あの時は何もなかったけれどいいものを一杯持っていたな」
俺はまた呟いた。そして呟いた時にまた気付いた。
「今も持っているのかもな」
そう思うと気が少し軽くなった。
あの時と同じ気持ちになってきた。夢があったあの頃に。
「行くか」
ここを去った時とは全然違う気持ちになっていた。当然戻って来た時より。何か全く別の気持ちになっていた。
俺は街を後にした。心をあの頃と同じにして。振り向いたらあの時があった。何もないけれどいいものが山程あったあの時に。
俺達のロカビリーナイト 完
2006・1・12
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