第百五十話 明智と松永その四
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「何もわかっておりませぬ」
「しかしあ奴の知識は凄いぞ」
場には平手も言う、当然忠義一徹の彼もまた松永を嫌っている。そしてその彼もこのことは認めるのだった。
「下手な学者よりもな」
「左様、そこも気になります」
柴田は平手にも言う。
「何処であそこまでの学識を備えたのか」
「そこも気になるな」
「はい」
その通りだとだ、柴田は平手に答えた。
「考えれば考える程奇怪です」
「まさに奇怪じゃな」
「何者でしょうか」
こうまで言う柴田だった。
「まことに」
「面妖じゃな」
「では何者か」
ここで言ったのは林だった、彼は船の上からから今は馬の上にいるのだ。
「そのことが一切わからぬとは」
「しかも周りにいる者達は」
彼等についても話される、常に松永の周りにつき従う者達だ。村井が怪訝な顔で彼等のことをここで言ったのだ。
「代々仕えている様な」
「それが有り得ないのじゃ」
平手はここでまた言った。
「氏素性の知れぬ者に譜代の臣下がおるか」
「まずないですな」
「それは」
「そうじゃ、ない」
平手ははっきりと周りに述べた。
「一代の臣下はおってもな」
「ううむ、考えれば考える程」
「わかりませぬな」
「松永久秀、何者なのか」
「一切」
そうしたことがわからないというのだ、そしてだった。
平手はだ、その彼等についても言った。
「あの者達も同じじゃ」
「ですな、少しでもおかしなことをすれば」
「その時は、ですな」
「躊躇なく斬りましょうぞ」
「ついでに松永めも」
こう話すのだった、しかしだった。
彼等の中で慶次だけはだ、笑ってこう言うのだった。
「ははは、まあ今はそれ程心配せずとも」
「よいというのか」
「今の松永殿は穏やかですぞ」
叔父である前田にも笑って返すばかりだった。
「ですから」
「全く、御主はな」
「気楽だというのですな」
「極楽とんぼじゃな」
それだというのだ。
「相手が相手じゃぞ」
「いやいや、松永殿とは茶を共にしていますが」
「よくあの様な者と飲めるのう」
毒でも盛られるとだ、前田は顔を顰めさせて言うのだ。
「全く、御主は命知らずじゃな」
「それがよき茶でして」
「あ奴の淹れる茶はか」
「はい、実に美味いのです」
「そのうち殺されるぞ」
前田は本気にそう思ってこう言うのだった。
「あの様な奴と共に飲めば」
「いつも言っておられるではありませんか」
荒木、茶に通じており利休とも親しい彼が慶次に話す。
「あの御仁とだけは茶を飲んではなりませぬ」
「荒木殿もそう仰いますか」
「当たり前です、相手が相手です」
松永だからだというのだ。
「それがしもあの御仁は危険だと見ています」
「でしょうか」
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