第百五十話 明智と松永その三
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「そしてか」
「はい、そしてです」
「織田信長殿も」
「全く以て難儀じゃ」
また難儀という言葉を出すのだった。
「わしはそういう役割か」
「十二家の一つ松永家の主として」
「それは」
「そういうことか、ではじゃ」
「はい、それではですな」
「そうしたことを仰らずに」
信長を裏切らない、それはというのだ。
周りの者達はこう話す、そしてだった。
彼等はここでだ、さらに言うのだった。
「その時は我等も一緒です」
「ですから」
「動けというのじゃな」
「長老のお言葉があれば」
「その時に」
「わかったわ」
松永も最後にはこう言った、そしてだった。
松永は溜息と共にだ、彼等に告げた。
「まあ今はな」
「確かに今はいいですが」
「このままでも」
「では少しでもこの今が続くことを願おう」
こう話しつつ彼も織田家の中にいた、とにかく彼は全く信じられてはおらず彼自身何やら色々としがらみがある様だった。
しかしそのことには誰も気付かない、どの者も彼を信じておらず何か少しでもおかしければと見張っていたがだ。
彼の素性は知らない、それで柴田達も言うのだった。
車座になり昼飯の干し飯に味噌を食いながらだ、柴田は滝川に問うた。
「ところで松永めのことじゃが」
「何かやらかしましたか、あ奴」
「残念だがそれはない」
柴田は滝川にそれはないと答えた。
「相変わらずじゃ」
「尻尾を出しませぬか」
「全くな」
何一つとしてだというのだ、このことは。
「巧妙に隠しておるわ」
「左様ですな、それがしも常に見張っていますが」
滝川も松永を嫌っている、それでそうしているがだ。
「全くです」
「何も掴ませぬな」
「はい」
何一つだというのだ。
「ずる賢い奴です」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「しかしとは」
「わしが今言うのはあ奴の尻尾のことではなくてじゃ」
それはだ、何かというと。
「あ奴が何者かということじゃ」
「何者か、ですか」
「あ奴か」
「何処で生まれ何をしておった」
言うのはこのことである。
「一体」
「それがわからぬのです」
松永と長年いがみ合ってきて今は奇しくも同じ釜で飯を食うことになっている筒井の言葉だ。
「何一つとして」
「筒井殿もご存知ないと」
「あの男と長年渡り合ってきた」
「確かな歳すらも」
その年齢もだというのだ。
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