第五十二話 商業科の屋上その十二
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「ミレッラさんですよね」
「そうですよね」
「そうよ、生霊よ」
自分からだ、ミレッラはにこりと笑って二人に答える。その二人の間で日下部は海軍の敬礼で答えたのだった。
「寝ている時の記憶はないから」
「そうなんですね、お身体の方から離れて」
「その間の記憶は」
「ないのよ」
そうだというのだ。
「それがね」
「そうですか」
「じゃあ私達との今話していることも」
「忘れるわよ」
そうだというのだ。
「ここにいることもね」
「そうですか」
「何か寂しいですね」
「仕方ないわよ、そうした幽霊だから」
このことは割り切っているミレッラだった、実にあっさりとした顔でそのうえで言うのだった。
「生霊も色々なのよ」
「身体から出ている間は覚えていない幽霊さんもですね」
「いるんですね」
「そうよ、いるのよ」
「それが貴女ですか」
「そうなんですね」
「ミレッラでいいわよ」
自分から二人に言うのだった。
「気軽にね」
「はい、それじゃあミレッラさん」
愛実がミレッラに応えてその名前を呼んだ。
「宜しくお願いします」
「私も」
聖花も愛実に続く、ミレッラを見てそのうえで声をかける、そのうえでミレッラの顔を見てこう言うのだった。
見れば彫があり白く人形の様な顔だ、とはいってもフランス人形とはまた違う。より南の明るい感じの顔である。
そのミレッラの顔を見てだ、聖花はふとした感じで彼女に尋ねた。
「ミレッラさんはイタリアの方ですけれど」
「今は日本に住んでるけれどね」
「イタリアの何処から来られたんですか?」
尋ねるのはこのことについてだった。
「一体」
「ナポリよ」
そこだとだ、にこりと笑って答えるミレッラだった。
「ナポリのサレルノ生まれなの」
「サレルノって?」
愛実はその街の名前を聞いてまず首を傾げさせた、そのうえで聖花に問うた。
「そこナポリの街なの」
「そうよ、南イタリアのね」
そこだとだ、聖花は愛実に答えた。
「海の方にあった街だったと思うわ」
「そうなのね」
「海が綺麗で」
ミレッラも微笑んで二人に話す。
「それでお魚が美味しいのよ、海のものが」
「そうなんですか、そこからですか」
「日本に来られたんですか」
「子供の頃から日本のことを聞いて面白そうな国だと思ってね」
それでだというのだ。
「高校の時に留学して、それで」
「今もですか」
「日本におられるんですね」
「いや、実際に見た日本はお話に聞くよりいい国だから」
それでだとだ、ミレッラは明るい笑顔で二人に言うのだった。
「色々なお料理を美味しく食べられて四季があって景色は綺麗でしかも文化が豊かでしょ。アニメも漫画もあって」
「日本のあらゆることがですか」
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