第七十三話 帯の力その五
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「我が今は貴様以外に害を為さないことはな」
「それは絶対か」
「このことは言っておく」
こう広瀬に言うのだった。
「そういうことだ」
「そうか、それは俺もだ」
「貴様もだな」
「闘っている相手は貴様だ」
猪、彼だというのだ。
「貴様しかいない、だからだ」
「草木を巻き込むことはしないか」
「隠れ使うことはあってもな」
それはする、だが闘いに巻き込むことはというのだ。
「それはしない」
「わかっているということか」
「どうだろうな、それは」
「少なくとも貴様の考えか」
「そうではあるがな」
「わかった、それではな」
少しの言葉のやり取りを挟み再び闘牛の如き闘いを繰り広げる、だがそれを何度か繰り返してからだった。
広瀬は咄嗟に跳んだ、そしてだった。
一本の高い木の上に登った。そこから下にいる猪に対して問うた。
「これならばどうする」
「上に行ったか」
「猪は飛べないな」
「如何にも」
「翼はない。それでどうする」
「確かに我は飛べない」
猪自身もそうだと答える、木の上の広瀬を見上げながら。
「鳥ではないからな」
「そうだな」
「しかしだ」
だがそれでもだというのだった。
「我は貴様のとこに辿り着くことは出来る」
「そして倒すことがか」
「そうだ、それは出来る」
こう言うのだった。
「いらぬ心配だ、全てな」
「ではどう攻めてくる」
「飛べなければ跳べばいい」
そうすればというのだ。
「それだけのことだ」
「成程な、それではだ」
「言われずとも行く」
自らだ、そうするというのだ。
「ではいいな」
「来い」
広瀬の今の返答は一言だった、木の上から猪を見下ろしながら言った。
「そして決着をつける」
「そうか、しかしだ」
「それでもか」
「貴様に我は倒せぬ」
自信に満ちた笑みでの言葉であった。
「これまで見た通りな」
「どうだろうな、それは」
「来い」
こう言ってそうしてだった、猪はというと。
一旦全身に力を溜めた、そしてだった。
跳んだ、そのうえで一直線に広瀬に襲い掛かる。
今まさに広瀬に牙を突き立てるその時にだった、彼は呼吸の為に一瞬だが口を開けた。
そして広瀬はその瞬間を見逃さなかった、まさにその開いた口にだった。
己の剣を突き出しそこに渾身の力を込めて光を放った、その光で。
猪の口の中を貫いた、剣は串刺しの様に下から来る猪に突き刺さった。その一撃で闘いの全てが決まった。
猪は一旦離れた、かなりの傷を受けたが力を抜きそれで自然に落ちることで剣から逃れた、そのうえで着地し己の前に着地した広瀬にこう言った。
「見事だ」
「これで決まった筈だ」
「如何にも、貴様の今の攻撃は我を倒した」
間違いな
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ