第七十三話 帯の力その四
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「攻撃を仕掛けてるけれどな」
「何時までも出来るものではないというのですね」
「ああ、疲れが出るからな」
だからだというのだ。
「無理だろ」
「そうですね、そのことは」
「体力は向こうの方が圧倒的に上だよ」
猪、彼の方がだというのだ。
「あいつの方が絶対に先に疲れるさ」
「そして疲れた時に」
まさにその時にだった。
「動きが鈍り」
「負けるさ、このままだとな」
「そうですね、ですが」
「勝つ方法はあるんだな」
「必ずです」
それがない筈がないというのだ、絶対に。
「ですから」
「それはそうだよな、それじゃあな」
「あの方はあの猪の弱点にも気付かれてですね」
「倒せるさ、戦術も見つけるな」
猪を倒せるそれもだというのだ。
「絶対にな、だからな」
「今の私達はですね」
「どちらにしても見守るしかないよ」
それしかないというのだ。
「だからいいな」
「はい、それでは」
聡美は不安そうな顔だったが中田の言葉に頷きその顔を信頼するものに変えた、そのうえで智子と豊香にも言うのだった。
「では今は」
「ええ、こうしてなのね」
「この場所で」
「あの人を信じて見守りましょう」
そうしようというのだ。
「願いを適えられると」
「そうね、今の私達はね」
「そうするしかありませんから」
それでだというのだ、二人の女神達も。
「ここはこの場から動かず」
「そうしましょう」
「それでは」
二人の女神達も頷く、そうしてだった。
彼等は今も見守った、広瀬のその闘いを。
猪は森の木々の間をその巨体で巧みに突撃を繰り返しそのうえで広瀬を攻めていた、広瀬は闘牛士の様に闘い続ける。
その中でだ、彼は猪に対して問うた。
「木は傷付けないのか」
「木をか」
「これまで掠りもしていないがな」
つまり傷付けていないというのだ、森の中の木達は。
「それはしないのか」
「我の今の相手は貴様だ」
広瀬だというのだ。
「木は関係ない、それにだ」
「それに。何だ」
「木の一本一本にはニンフがいる」
ギリシア神話における妖精達だ、様々なものに宿っており神々や人間達のとの間に多くのロマンスを残してもいる。
「娘達は傷付けない」
「だからか」
「我の愛人にもなるかも知れないからな」
だからだというのだ。
「もっともこれはアレス神ならばだがな」
「貴様の話ではないな」
「そうだ、しかしだ」
その考えは受け継いでいるというのだ、レプリカであっても。
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