第七十三話 帯の力その二
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「ですからアレス神もです」
「猪になって恋敵を殺したんだな」
「そうしました」
聡美はこう中田に話した。
「ですから」
「絶対に油断は出来ない相手か」
「あの方がどう闘われるかですか」
「それを見せてもらうか、ああ」
中田は目の前の森、間に広瀬の姿が見える夜の森の中を見ていた、その森の中に切り絵の様にあらたな姿を見て声をあげたのだ。
「来たな」
「はい、あれがです」
「その猪か」
巨大だった、その姿は。
高さだけで人並はある、そして全体となると。
「象よりは小さいけれどな」
「獅子や虎よりもですね」
「ああ、大きいな」
有り得ない大きさだった、猪にしては。
「相当だな」
「ですから」
「強いか」
「アレス神の強さです」
まさにその強さだというのだ。
「ですから勝つには」
それはだというのだ。
「難しいです」
「そうだな、しかしな」
そrでもだとだ、中田は笑って言った。
「あいつはやってくれるだろうな」
「そうですか」
「心が違う、だからな」
それ故にだというのだ。
「やってくれるさ」
「そうか、じゃあな」
こう話してそしてだった、中田は広瀬を見守るのだった。その広瀬はというと。
その巨大な猪と対峙していた、猪はその大きな赤く爛々と光る目で彼を見ていた、そのうえでこう言って来たのだった。
「貴様に恨みはないがな」
「それでもか」
「倒させてもらう」
こう人間の言葉で言うのだった。
「それが我の本質だからな」
「本質か」
「そうだ、我はアレスの化身だ」
自分でもわかっていた、このことが。
「だからだ、戦い倒すことは本能だ」
「それでか」
「貴様を倒す」
そうするというのだ。
「では覚悟はいいな」
「神に人は倒せないか」
「絶対にな」
猪は目を輝かせながら述べた。
「我はアレス神の力をそのまま受け継いでいるからな」
「だからだな」
「貴様に我は倒せない」
絶対にだというのだ。
「覚悟しておけ」
「生憎だが俺は願いを適える」
由乃、彼女の笑顔を思い浮かべながらの言葉だった。
「だから必ず勝つ」
「そうするか」
「でははじめるか」
広瀬は右手に持っているその剣を構えた、そうして。
光の矢を次々に出す、だがその矢は。
猪はその巨体からは想像もつかない速さで左右に動きそのうえでかわした、光の矢は虚しく森の中を通り過ぎるだけだった。
そうして広瀬に向かって突進してくる、牙が輝いた。
広瀬はその牙を見て瞬時にだった、一直線に来るその巨体を。
左に跳びかわした、そこには木がなかった。
それでかわしてだ、猪の後ろ姿を見てからだった。
闘牛士の要領で再び光の矢を放つ、しかしそれもだった。
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