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碁神
子どもでいて欲しいと願うのは俺のエゴです。
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ない……。

● ○ ●

「――と、いうわけで! 今日ばかりは無礼講! 飲んで騒いで、日頃の疲れを忘れましょう! カンパーイ!」
「「カンパーイ!」」

俺は今、学校の最寄り駅の隣駅から徒歩一分の居酒屋にいる。
一学期終了に合わせて前々から企画されていた、職場のお疲れ様会……つまり飲み会に参加しているのだ。
俺は飲めないが、やはりこういう親睦会には参加しないと、職場の人間関係に響くからな。

注文したウーロン茶をチビチビ飲んでいると英語の吉岡先生が腕を絡ませてきた。

「椎名セーンセ? 何飲んでるんですかぁ?」
「っ! う、ウーロン茶です」

ちょ、胸当たってる当たってる!
吉岡先生は新任の先生だが、アメリカに留学していた時期が長いためか非常に積極的、行動的で俺にもフレンドリーに接してくれる先生だ。
職場では数少ない女性の先生でもある。

「ええ? 何ソフトドリンク飲んじゃってるんですかっ! やっぱ飲み会はお酒飲んで何ぼでしょう!」
「ええーと、わ!?」

反対側からグイッと腕を引かれ、隣の人に倒れこむ。
ガッシリとした体格を背中に感じ、慌てて見上げれば山口先生だった。
体育の先生だけあって鍛えてるのは分かるが、あっさり全体重を受け止められてしまうのは同じ男として少々複雑である。

「吉岡先生、椎名先生はお酒飲めないんですよ。 前回の飲み会で、うっかり一口飲んじゃって大惨事になったでしょう」
「……そういえばそうでしたねー」
「はは……すみません」

そう、俺はアルコールが全く駄目なのだ。
付き合い程度にでも飲めれば良かったのだが、一口飲んだだけで記憶が飛んでしまい、記憶を無くした時のことを聞いても、時には青い顔で、時には赤い顔で『知らない方が良い』と言われ誰も教えてくれない。
ただ、『大惨事』とだけ言われるので、よほど酷いのだろう。

「椎名先生がウーロン茶なら、私も次はウーロンハイにしますかねぇ」
「あっ!それじゃあ私もっ!」

ニコニコしながらお酒を一気飲みしてウーロンハイを頼む山口先生と吉岡先生にちょっと引いた。 見てるだけで酔ってしまいそうだ。

それからお酒でどんどんテンションが上がっていく吉岡先生に色々話しかけられるが、さっきの結城のことが気になってなかなか気分が盛り上がらない。
とは言え、暗い顔をしていたら酒の席に水を差してしまう。
そう思ってなんとか笑顔を作って話を聞いていたが、流石に疲れてきた。

「すみません、ちょっとお手洗いに」
「はーい、いってらっしゃーい」

ヒラヒラと手を振って見送ってくれる吉岡先生を尻目に、席を立ち上がり、トイレへ向かった。

「ふぅー……」

ドンチャン騒ぎから離れて、静かな曲の流れるトイレの便座に座り、や
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