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碁神
子どもでいて欲しいと願うのは俺のエゴです。
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学期ねー!」
「結城君もまたねー」

周りを取り囲んでいた生徒達が一斉に離れていく。
結城……もう尊敬を通り越して畏怖されて無いか……?
イジメられそう、なんて福田の考えすぎだと思ったが、そう考えざるを得ない程の何かがあるのだろうか。
まぁ、逆鱗に触れた時暴力的になるところがあるから、そのせいかもしれないが……。

「椎名先生、一学期間ありがとうございました」
「いやこちらこそ、結城には助けられっぱなしで。 ちょっと情け無いけど、結城がいてくれて良かった。 ありがとな」
「学級委員として当然の仕事をしたまでですよ。 ……ところで、さっきの期末の話ですけど――」

感謝の言葉をさらりと流し、結城は優等生然とした笑顔で小首をカクリと傾げた。

「あいつ、チクリました?」
「へ?」

一瞬何を言われているのか分からなかった。

「福田君ですよ。 昨日先生と相談室に入って行くのを見たって、ご親切にも教えてくれた人がいるのですが――」
「……見間違いじゃないか?」
「そうですか?」

綺麗な笑顔を貼り付けたまま、結城は言葉を続ける。

「伸びた点数の平均点が全学年でトップなんていう嘘くさいお話をされたので、てっきり『今回の国語の期末、学年で平均点トップを取ろう』なんていう話になっていたことを福田から聞いたのかと思いました」
「そんな話になっていたのか、初耳だ。 でも、嘘くさいってのは?」
「僕、中間も期末も満点で、一点も伸びてませんから。 ……ああでも、ハルト――松浦も福田君も中間テストが悲劇的点数でしたから、そこでバランス取れたのかもしれませんね」

この間、結城の表情変化無しである。
何か異様な迫力があるし、これは確かに怖いかも……福田の気持ちがちょっと分かったよ!

「伸びた平均点がトップだったのは事実だし、お前も含めて期末は全員よく頑張ったよ。 国語教師としてそのことを伝えたかった。 それだけだ。 今日の話に福田は関係ないよ。 それとも何かチクられるような心当たりがあるのか?」

少しずるい聞き方をすると、結城が微かに表情を変えた――嘲け笑うように。

「別に、したという程のことは何もしてませんよ。 もうご存知だと思いますが。 少しからかわれたくらいで先生に泣きつくとは……彼はもう少し根性を鍛えてあげた方が良いかもしれませんね。 先ほど先生のお話に出てきた、困難に立ち向かう力ってのが足りていないと思いません?」

『福田は関係ない』という言葉を華麗にスルーされた。 これはもう確信を持って話しに来たのだろう。 相談室に入る時、見られていないか確認したつもりだったが……誰だよ結城にチクった奴は!

「――尤も、あの程度のテストで努力も何も無いと思うんですけれどね。 国語に限らずですが」
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