Development
第三十六話 好敵手
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、ありがとう。大丈夫、無茶はしないよ」
「お前のその言葉は信用できないから言っているんだ」
そう言って、千冬は笑いながら紫苑の頭を軽く小突く。出席簿はさすがに持っていなかったようで、チョップのような形だ。
この一年で何度も行われたやり取りに紫苑は苦笑しながらその場を後にした。
その後に向かった先は簪が作業をしている部屋。
「打鉄弐式はどうですか?」
部屋に入った先でディスプレイに向かって作業をしている簪に声をかける。
その声に、大きな反応を示すこともなく紫苑を一瞥したあとに再び作業に戻りながら簪は口を開く。
「はい、問題ないです。動作の理論値に対するブレも今回の試合で確認できましたので修正済みです」
素っ気ないように見えるその態度も紫苑は特に気にしない。こうして会話になることが自体が喜ばしいからだ。
かつての彼女と比べれば、その態度自体には大きな変化はないかもしれないが、所々で紫苑に対する信頼が少なからず見えるようになっていた。
今まででは声をかけても一言二言の返答だったことを鑑みれば、その変化は明らかだ。
「そうですか、後付した情報共有機能も問題なかったですよ」
今回のトーナメントがタッグ戦だと判明した際に急遽追加したこの機能ではあるが、それを提案したのは驚くべきことに簪だった。
現在のISは、もちろん集団戦が皆無という訳では無い。とはいえ、第一回モンド・グロッソにおけるブリュンヒルデの印象が強すぎたためか一対一、個々の戦いに重きをおく風潮が強い。それは各国の開発している専用機からも見て取れる。
その点、簪の開発した打鉄弐式はマルチロックシステムを採用したミサイルといった集団戦を想定した武装があり異色とも言える。が、簪はそもそも一人の力で姉である楯無を超えようとしていた。その彼女がパートナーありきの機能を提案したことは、彼女自身の変化を如実に表しているといえる。もちろん紫苑はそのことを歓迎し、全面的に協力して完成へとこぎ着けた。
「よかったです」
そう答えた簪は、微笑んでいるように紫苑には見えた。
その後、紫苑は簪にラウラ戦のことについて一部伏せつつ話す。
VTシステムの名前は彼女を危険に晒す可能性もある。故に、危険な技術が使われていることと秘匿が必要であるという形で説明した。彼女自身、そういった技術や国家同士のいざこざには興味がないのか、ラウラの無事だけ確認できるとあっさり納得する。一夏も保健室に行ったことは知っているはずだが、そちらの心配は皆無なあたりまだ恨んでいるのだろうか……。
「次はいよいよ、楯無さん達との試合ですね。頑張りましょう」
紫苑の言葉に簪は強く頷く。
かつてのようにひたすら楯無を超える強さを求めることは
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ