第五十八話〜娘の願い〜
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塊が飛び込んできた。
ライはそれをあらかじめ想定していたように避け、ライと同じくその射線上にいたヴィヴィオは聖王の鎧を展開し集束砲を受け止める。
ライはなのはに命令する時に『破壊』ではなく、『撃ち抜け』と言った。この意味を汲み取ったなのはは、壁抜きを行ったのだ。この時点で、ライはディエチの砲撃によりなのはの砲撃が逸らされる事も考慮に入れて指示を行っていた。
そして、なのはの砲撃により瞬間的に足止めを食らったヴィヴィオを放置し、ライは自分の目標に対して壁越しに視線を向けた。
「バレル展開」
『ラジャー』
空中で姿勢制御を行い、ヴァリスを右手に持ち替えながら、ライはそう口にした。
主に応えるようにパラディンは了承の意を伝え、ヴァリスの砲身を縦に開く。ここまではこれまで行ってきたライの砲撃と同じであったが、そこでライがさらなる言葉を紡いだ。
「バレル拡張、モード・ブラスター」
右手に持ったヴァリスを視線の先の壁に向かい構える。構えた瞬間、ヴァリスの砲身を覆うようにライの魔力がある形を形成し始める。
それはより太く、長い砲身。
ヴァリスは元々、耐久力に優れた構造を持っているがそれにも限界はある。これまでの戦闘で機体の疲労度がピークに近くなってしまった為、その限界を引き上げるためにライは自分の魔力で砲身を編み上げたのである。
「術式展開」
ライの言葉に呼応し、砲身の中に8枚ほどの魔法陣が形成され、並ぶ。
ライが使える魔法は決して多くはない。だが、一度使うことが出来るようになれば、ライはその魔法のコントロールを完璧に行える程に反復する。それにより、ライは精緻な制御を行い、制御と扱いの難しい『収束』と『圧縮』を行う術式をそれぞれ4枚ずつ発動した。
収束された魔力を圧縮し、その圧縮された魔力をさらに収束と言う力技を使うことで、一発の弾丸が形成される。
「目標補足」
自分の中にある確たる情報を統合し、ライは視線の先、壁の向こう側の獲物に対して狙いを定めトリガーに指をかける。
『破砕期待値、フル』
「っ!」
デバイスからの報告があった瞬間、指がトリガーを引ききる。
バースト一歩手前の魔力弾は音を置き去りにして結果を残す。
まず、ライが向けていた視線の先の壁が無くなる。正確にはその一部が無くなる。
ライが今できる極限にまで圧縮された高密度の魔力が無駄な破壊を一切行わず、壁を穿っていく。
それは先ほどのなのはと同じく壁抜きには違いないのだが、その結果が同じでも過程が違う。なのはの砲撃と比べライの砲撃―――この場合は狙撃に近い―――はかなり早い。
それがどのくらい早いかというと、“自分のいる部屋に弾が壁越しに打ち込まれたのを認識できない程”である。
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