第5章 契約
第81話 王都入城
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、その瞬間、再び何かを思い出したように振り返るジョゼフ。
そして、タバサの顔を見つめ、
「トコロでシャルロット。我が息子、ガリア王太子ルイは優しくしてくれて居るかな」
少し人の悪い類の笑みを浮かべながらそう問い掛けて来る。
どうもこのジョゼフと言う人間は、頭脳の方の出来は良いように思いますが、どうにも性格の方がよろしくないように思いますね。
おそらく、俺をからかっているのでしょうが。
そんな事を考えながら、少し顧みてタバサに視線を送る俺。
尚、普段のタバサならば、こんな性悪な問い掛けは素直に無視して、問い掛けた人間を普段通りの冷たい瞳で見つめ返すだけなのですが……。
しかし……。
しかし、その時、タバサはジョゼフと俺の間で視線を泳がせた後、ややはにかんだ様な表情。その白磁の肌を朱に染め、
「はい」
……と伏し目がちの仕草で小さく答えたのでした。
☆★☆★☆
一定の間隔で天井から吊るされた豪奢なシャンデリアからは、普段使用している魔法のランプとは違う強い光が放たれ、
鏡張りとなった左側の壁がその光輝を反射して、現在の時刻。夜の七時を回った時間帯から考えられる暗い宮殿内を、光溢れる空間へと変えている。
そう。この世界にも銅鏡や錫を使用した鏡ではなく、俺の良く知って居る鏡は存在します。しかし、その鏡を作成する技術を持って居るのが、今まではロマリアだけだったので非常に高価な品と成って居り、その鏡を八十メートルにも及ぶこの回廊の左側一面に使用したガリアの国力は目を見張る物が有ると言えるでしょうね。
そして、其処から天井の方に視線を移すと、其処にはガリアを代表する画家の手に因る一面の天井画が、この場所……ヴェルサルティル宮殿の鏡の回廊と呼ばれる場所を訪れた者の目を楽しませてくれます。
更に、その回廊の壁や柱のすべての箇所に精緻な彫刻が施され、各所に置かれた金の燭台と、銀の装飾品がより一層、きらびやかな王侯貴族の生活を想像させる配置となる空間。
そう、ここは回廊。本来は王の寝室と王妃の寝室を結ぶ回廊と成って居る場所。但し、外交的に重要な人物を招いた時にのみ、その職能を回廊から、歓迎の儀式や宴を行う場所として使用されて来たこの場所を、本日はガリア王国王子ルイとオルレアン家息女シャルロットの御披露目の会場として使用している、と言う事です。
そう言えば、地球世界のヴェルサイユ宮殿でも、ここは婚礼の場所として使用された事が有ったはずですか。
ブルゴーニュ公爵。ルイ十五世の王子の結婚式。
そして、王太子……将来のルイ十六世とマリー・アントワネットの婚礼を記念して開かれた仮装舞踏会なども、確かこの場所を使用……。
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