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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第81話 王都入城
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御言葉です陛下」

 普段とは違い、流暢な台詞で答えるタバサ。こんな時には必ず、正式な受け答えが出来る以上、普段の彼女……。必要最小限の台詞だけで過ごしているのは半ば演技で有ると言う事。
 おそらく、煩わしい人間が近寄って来難い雰囲気を纏う為に、そう言う風に振る舞っている、と言う事なのでしょう。

 そもそも、今までの彼女の立場は謀反の疑いを掛けられた大公家息女。その彼女に近寄って来る人間は、すべて善なる存在の訳もなければ、すべて彼女に好意的だったとは限りません。
 この夏に現われたシャルル・カステルモール東薔薇騎士団副長のように、彼女を利用して成り上がろうとする輩も数多く近付いて来たはずですから。

「父は事ある毎に、陛下との幼き日の思い出を楽しそうに語って居りました。その陛下の今の御言葉を天国の父が聞けば、さぞ喜んだ事で御座いましょう」

 跪いた姿勢のまま、そう答えるタバサ。
 ただ、本当に彼女の父親がジョゼフとの昔話をタバサに聞かせて居たのかと問われると、疑問符しか浮かばないのですが。

 何故ならば、彼女の父親はおそらく、アンリ・ダラミツの精神支配の影響下に有ったはず。そんな人間が、真面な判断力を有していた可能性は非常に低いと思いますから……。
 しかし、この一言は、ジョゼフとオルレアン公シャルルとが不仲で有り、未だ双方の派閥の中で燻って居る蟠りを、多少、和らげる効果が有った事は間違いないでしょう。

 タバサの言葉に、今回も鷹揚な仕草で首肯くジョゼフ。
 そうして、

「さて、二人とも。何時までも片膝を付いた状態では、儂も膝を付いて話をせねばならないのだが」

 割とフランクな口調。このハルケギニア世界のヨーロッパ最大の国の王とは思えないようなくだけた口調で、そう話し掛けて来るジョゼフ。ただ、この口調や、タバサの元に見舞いと称して現われた時の雰囲気から察すると、このジョゼフ一世と言う人物は、本当にタバサの親父さん。オルレアン大公シャルルとの間に、幼い頃に楽しい思い出を作った事の有る人物かも知れない。
 そう思わせる一般人と変わらない雰囲気。

 少なくとも、王位を争って暗闘を繰り広げるようには思えない人間。

 もっとも、ジョゼフ自身から感じて居る気が、普通の人間としてはかなり異質な雰囲気。この宮殿の地下に広がる大空洞内で太歳星君との戦いを経験した後のタバサが発して居る気配に良く似た気を纏って居る以上、この聖賢王ジョゼフ一世と呼ばれる人物も、タバサと同じ覚醒した夜魔の王で有る事は間違いないのでしょうが。

 そう考えながらも、それでも王の許しが出たので、片膝を付いた姿勢から、その場に立ち上がる俺とタバサ。
 その時には既に踵を返し、降って来た階段に右足を掛けているジョゼフ。

 しかし
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