第5章 契約
第81話 王都入城
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膝を付き、顔を地面に向けた状態ながらも、周囲に朗々と響く俺の声。
「そなたの身に危険が及ぶ可能性が有ったとは言え、十五年間も遠い地に行かせて仕舞った不甲斐無い父を許して欲しい」
顔は未だ紅い絨毯の上に向けて居るので確かな事は言えないのですが、一言発せられる度に、少しずつ声が近付いているように感じますから、ジョゼフはゆっくりと階段を下って来ているのでしょう。
まるで、神の位から、人の世界に降りて来ると言う事を現しているかのような雰囲気で。
やがて、俺の視界内にジョゼフの靴と脚が入る。
そして……。
「無事に戻って来てくれて嬉しく思うぞ、ルイス」
自ら俺と同じ位置に視線を落とし、俺の肩に手を置くジョゼフ。
流石に、ここまでされたら何時までも視線を絨毯の上に落としている訳には行かず、顔を上げる俺。
その時、この場に到着してから初めて、俺の瞳を覗き込むジョゼフと視線が合う。
【先ほどのアレは少々、やり過ぎじゃな。儂は、鷹を自らの手に留まらせる事など出来ないぞ】
その瞬間、接触型の【念話】が俺の心に響く。この声は間違いなくジョゼフの声。
「勿体なき御言葉。父上のその御言葉だけで、これまでの苦労が報われると言う物です」
【ルイ王子を英雄に仕立て上げようとしたのは、そちらの方では有りませんか、父上】
現実の言葉の方では模範的な息子を演じ、【念話】の方では普段の皮肉屋の言葉を伝える俺。
そう。ガリア王家にどんな意図が有るのか判りませんが、王太子ルイを英雄に仕立て上げようとしているのは間違い有りませんから。
もっとも、その発表されている全ての内容は、俺とタバサ。湖の乙女たちが為して来た仕事を少しスケール・ダウンさせた内容にすぎないのも事実なのですが。
流石に、俺とタバサ。更に、湖の乙女たちが関わった事件をそのまま発表する事の方が、うそ臭く成って仕舞いますから。
例えば、十一月のクトゥグアの事件などは、世界が滅びたとしても何の不思議もなかった事件ですからね。
俺の答えに鷹揚に首肯いたジョゼフが、今度は俺の脇に控えるタバサに視線を移し、
「シャルロット。余は実の弟さえも護ってやる事は出来ず、お前にも辛い思いをさせて仕舞ったな。許してくれ」
……と、俺の時と同じように、謝罪の言葉を最初に口にする。
そして、この言葉はおそらく本心からの台詞。
何故ならば。少なくとも、今の台詞の前後のジョゼフから悪意のような陰の気が発せられる事は有りませんでしたから。
但し、天に太陽がふたつない様に、ガリアの玉座もひとつ。その至尊の位に有る人間が自らの言葉として、謝罪の言葉を口にすると言う事に意義が有ります。
しかし、
「勿体なき
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