第5章 契約
第81話 王都入城
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が悲鳴を上げた。
それは、その上空より急降下を行う鷹の目的地に想像が付いたから。
其の先には――――
蒼い髪の毛を持つ少年少女の姿。少年の方は、海軍の士官が着る白の軍服に身を包み、少女の方は、同じく白のドレスを纏う。
流石に、鷹……。全長にして五十センチほどの鷹では命まで取られる心配はないにせよ、このガリアの新たなる門出の日を、その主人公のふたりの血で染め上げる訳には――
しかし! そう、しかし!
次の瞬間、高く掲げられた俺の左手の拳に留まる鷹。その獲物を引き裂く爪は強く俺の拳を捉えながらも、決して傷付ける事はなく、まるで、己の定められた止まり木に羽根を休めるが如く自然な姿で……。
周囲に発せられていた絶叫が、悲鳴が、そのまま巨大な歓声へと変わった。
そしてこの瞬間、ガリア王子ルイに新たな伝説が出来上がったのでした。
……そう、これは俺の演出。この鷹はオルニス族の少女シャルのファミリア。
神武天皇と八咫烏や、金鵄に繋がる取り合わせを、この場に再現したと言う事。
まるで蒼穹を割るかのような歓声が沸き起こり、熱気が噴水の水すらも熱湯に変えるかのような雰囲気。
その熱気と、ガリア王子ルイ、オルレアン大公皇女シャルロットを讃える歓声の中、本日の主役のふたりは、紅い絨毯の上を太陽の方向に向かって歩を進めて行く。
左手には未だ鷹を留まらせ、
右手には生涯の伴侶となる少女の繊手を取ったままで……。
そして……。
そして、ガリアの王の住まう場所。ヴェルサルティル宮殿の階が始まるその場所で立ち止まるふたり。
そのふたりが歩みを止めた瞬間、それまで叫ばれていたルイ王子とシャルロット姫を言祝ぐ歓声のトーンが徐々に納まって行き、やがて完全な静寂がその場を支配する。
その瞬間、宮殿の入り口に現われる長身の影。
俺やタバサと同じ蒼い髪の毛。威厳の象徴で有る髭。このガリアの王冠を戴く唯一の存在。
そして、設定上の俺の父親。ジョゼフ一世が姿を現したのでした。
その時。俺の左手を止まり木とし、ひと時の安らぎを得ていた鷹が彼に相応しい高き声を上げ、その翼を広げて遙か上空へと飛び立った。
大観衆が存在する場所に不釣合いな静寂の空間を切り裂く鷹の甲高いその鳴き声。これは、この場所に居た全員に、ガリアの新しい歴史の始まりを予感させる鬨の声に聞こえたに違いない。
鷹が飛び立ち、そして、彼女と繋いでいた右手を離した後、ゆっくりとその場に片膝を付き、騎士として最上の礼を持ってジョゼフに臣下の礼を取る俺。
当然、俺の右斜め後方では、タバサも同じように臣下の礼を行う。
「陛下。ただ今、帰参致しました」
片
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