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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第81話 王都入城
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名前と、俺に与えられた偽名の家が結びつく事は、ガリアに取っては害をもたらせる事はないはずですから。

「これは、あなたの罪ではなく、わたしの罪。あなたが思い悩む必要はない」

 柔らかく、そして、普段よりは幾分冷たい手を俺の手に重ね、更に言葉を続けるタバサ。
 但し……。

「いや、それは違うな」

 短く答える俺。今、この馬車の中には俺と彼女の二人きり。他には誰も存在しない。
 そして、この馬車の内部は魔法的に言うのなら、完全に外界から切り離された異界。この内部を探る事は不可能とは言いませんが、かなり難しいはずですから。
 まして、俺やタバサに気取られぬように探るのは更に困難な作業と成るはずです。

「最初の理由はどうあれ、一度漢が約束した事は守り通す必要が有る」

 その部分は流石に譲る事が出来ないので、そうやって答えて置く俺。
 そう。例え、彼女……。タバサを貴族から。更に、王家の呪縛から解き放つ為の交換条件として受けた仕事で有ったとしても、それに納得して受け入れたのは俺。
 俺には彼女を攫って、何処かに。この世界の東洋にでも逃げる事は可能です。しかし、その選択肢を選ばずに、このガリアのルールに則った方法を選んだのは俺。
 まして、あの時のジョゼフは、俺に対しても、そしてタバサに対しても、強制するような真似は為しませんでしたから。

 其処まで、少し硬い表情で告げてから、破顔一笑。普段の俺の顔に戻す。
 そうして、

「多くの民を欺くのが罪なら、その罪は俺とオマエさんで相応に背負う。それでエエやろう」

 ……と、告げて置く俺。
 そう、何にしても、最早引き返す事の出来ない場所にまでやって来たのは間違いなかったのですから。


☆★☆★☆


 長い直線の道路を一路郊外の方向に進む大名行列。その先に、ようやく見えて来る金属製の柵と門。
 そう。ガリアの行政の中心、ヴェルサルティル宮殿と言うのは、元々、リュティス郊外に有る森を切り開いて作られた離宮。その離宮を行政の中心にしたのが先代の治世の最後の方。王太子としてのジョゼフの仕事と言っても問題ない時期の事。
 つまり、ガリア王国の歴史から言うと、比較的新しい行政の中心と言う事に成る建物ですか。

 沿道を埋める民衆の数は、この辺りは流石に少なく成って居るのですが、それはこの周囲には未だ民家が少ないから。
 しかし、ヴェルサルティル宮殿内の庭園。その正面玄関前に有る噴水広場に関してはそう言う訳にも行かないでしょうね。

 ジョゼフは自らの度量と、それにガリアの権勢を広く世間に示す為に、一般人にも自由に宮殿内の見学を出来るようにして有りますから。その為に必要なガイドブックのようなモノ……『王の庭園観賞法』成る冊子を、このハルケギニア
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