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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第81話 王都入城
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代。清教徒革命真っただ中の世界には絶対に存在しない未来の技術に因る明かりと、未来の楽器に因り奏でられる音楽。

「ガリア王家はこの数年の間に数々の内乱を、すべて其の武威を持って鎮圧して来て居る」

 柔らかなピアノの音色に合わせて舞う貴族たち。彼らを照らし出す、瞬かない、そして、眩しすぎる事のない光。
 その様子を、ジョルジュの肩越しに見やりながら、そう話し始める俺。

「更に、この冬の飢饉を想定して、既に相当量の食糧の備蓄が用意されている事も公に発表している」

 尚、これは市場の安定を図る意味もかねて行った措置でも有ります。要は、今年の麦が凶作だった事は大抵の商人が知って居る事ですから、食糧の買い占めを行って、後に高値と成った時に売り出して一山当ててやろうなどと企む連中の出鼻をくじく為の策。
 もし、食糧が異常な高値で取引されるように成り、庶民……平民の間で餓死者が出るような状況と成りそうな気配が起きたら、王家が即座に反応して国庫を開く用意が有るぞ、と言う事を報せる為の。

 まして、その為に、現在も南仏やスペイン・ポルトガルなどの、ガリアでも温暖な地域に当たる地方に有る王家所有の荘園では食糧の増産は、鋭意続けられて居り、今現在、もし、ガリア王家が国庫を開けば、食糧の供給過多が起きて大きな値崩れが起きる事は確実だと思われる状況と成って居ます。
 いや、そう思い込ませるだけで良いのです。実際は、ガリア以外の国は間違いなく凶作で食糧に関してはかなり不足気味。まして、トリステインやアルビオンは戦時下ですから、糧食は幾らでも必要なはず。

 但し、思ったほどは儲けられない可能性が有る、と商人たちに思わせる事が重要なのですから。
 まして、魔法を使う貴族に対してあまり危険な挑発を繰り返すと、実力を持って排除される危険性も付き纏うので、そのリスクも考え合わせた上で、食糧の買い占めはリスクが伴うと思わせる事が。

「そして、今回のこの祝宴。ここに集まったガリア貴族は、自分たちの知らない、最先端の文化に触れる事と成る」

 俺はそうジョルジュに告げながら、瞳の方では優雅にワルツの調べに合わせてステップを刻むガリア貴族たちの出で立ちと、俺。そして、タバサや湖の乙女たちの姿を見比べる。

 そう。その両者の間にはファッションとしても、明確な差が現われていますから。
 俺の服装はタキシード。黒の上着に白のシャツ。スラックスも当然、上着に合わせて黒のスラックス。
 ネクタイは、黒の蝶ネクタイに白い絹製のポケット・チーフ。
 そして、靴は黒いエナメルの短靴。

 十九世紀末から二十世紀。そして、二十一世紀の俺が暮らして居た世界でも通用するフォーマルな衣装。
 この清教徒革命当時の貴族社会には存在しない斬新なデザインの服装。

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