第5章 契約
第81話 王都入城
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畔。マジャール侯爵領ブダペシュトから始まり、各地の都市を回りながら王都リュティスにルイ王子として入城せよ、と言う命令書をたずさえた蒼い髪の毛を持つ騎士姿の少女で有った。
「清廉潔白な王家など、この世界には存在していない」
自らの義理の姉と成る少女。今は、この王室専用の馬車の斜め前方で馬上の人と成って居るアリアの姿をただ瞳に映すだけの俺。そんな俺の膝の上に置かれた左手にそっと自らの手を重ねながら、未来のガリア王ルイの妃となる少女が実際の言葉で、俺の迷いを払拭する為に、そう言ってくれる。
俺の発して居る陰の気を感じ取った彼女が……。
確かに、彼女の言うように清廉潔白な王家など存在するとは思えません。表面上は国中の富みを集め、金銀財宝や絹のドレスでその身を飾り、天上の楽と詩に因って褒め称えられようとも、その一枚裏側はその王家に因って流された血と、陰謀の黒き毒に彩られている物ですから。
普通の王家なら。
まして……。
それまで、薄い紗のカーテン越しに外に視線を向けて居たのを、自らの左側に座る少女へと移す。
そう。ましてこの少女。故オルレアン大公の遺児。シャルロット・エレーネ・オルレアンと言う名前の少女は正に、その王家の持つ影の部分に翻弄され続けて来た少女です。そして、おそらく本人は、そんなオルレアンの姫に戻る心算もなければ、貴族に戻る心算もなかったはずですから。
ただ、何故か、その彼女が将来の……。
其処まで考えを進めてから微かに首を振り、思考を反対方向へと進める。
そう、この混乱した状況。
例えば、異常気象に端を発する凶作。彼方此方で発生している疫病。
そして、迫り来る戦乱の気配。
この混乱した状況下で、何時までも王制を敷くガリアで世継ぎを決めないで置くのは問題が有りますか。
かなり可能性は低いけど、ジョゼフがにわかの病に倒れたり、何者かの凶刃に倒されたりする可能性もゼロでは有りません。
更に言うと、ジョゼフは覚醒した夜魔の王。彼が人間的な意味で言うトコロの死を迎えるのは、最短でも後、二、三百年は先の話。
流石に、そんな先にまで彼がジョゼフ王で有り続けるのは問題が有ります。人間を支配する王が、実は人間以外の存在で有る、と言う事を知られるのは……。
何処かの段階で次代に王位を譲る。もしくは譲ったフリをして、引き続きジョゼフ自身が次代の王を演じ続けるか。
このどちらかの選択肢しかないでしょう。
そして、俺とタバサはそのジョゼフの隠れ蓑にはぴったりの存在。
共に権勢欲はゼロ。ジョゼフの正体を知って居ても、それはジョゼフの方も同じ事。タバサと俺の正体を知って居るのは間違い有りません。
それに、タバサは王位を争ったオルレアン大公の遺児。彼女が背負った家の
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