六幕 張子のトリコロジー
12幕
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――ルドガーは包み隠さず説明した。無事時歪の因子を破壊したことも、そのためにミラを騙して加担させたことも。
「そんなことが……」
「ルドガーは責めるなよ。積極的に口車に乗せたのは俺だ」
「アルヴィンだけじゃないよ! わたしもミラに、わざと誤解させるように話、した……」
ルドガーはポケットから〈カナンの道標〉を取り出す。ミュゼであったモノで、今はただの無機物――
その〈道標〉を横から黒い手袋をした手が掠め取った。
「ユリウスさん、何を!」
「分かったはずだ、ルドガー。もうこんな思いはしたくないだろう」
奪った。ルドガーがユリウスの言う「こんな思い」をしてまで勝ち得たモノを、酌量もなく、いとも容易く。
フェイの体は再び頭より先に動く。
フェイはユリウスの左腕にしゃにむに掴みかかった。
「! 何を…!」
ユリウスが怯んだ隙に、〈道標〉を奪ってルドガーのそばまで下がる。
「コレは、ルドガーの。勝手に奪らないで」
ユリウスの蒼眸が苛烈さを宿す。分史世界でエルに向けたものと同じ色。怖い、怖いけれど、フェイは〈道標〉を握りしめて離さなかった。
「なるほど。それで連れが増えたのか。かなり興味深いな」
場の誰でもない声に、全員が声のしたほうをはっとふり返った。
「リドウさん! 何でここに」
「だって俺、分史対策室室長だから。お疲れ、ユリウス『元』室長。〈道標〉の回収ごく――」
「あなた、だぁれ?」
今分かった名前以外で、フェイは彼を知らなかった。フェイがルドガーたちと行動するようになってからはリドウと会う機会がなかったから当然だ。だから疑問が声になった。
口上を邪魔された男は短い間だけ胡乱な目をフェイに向けたが、それはすぐ厭らしい笑みに取って代わった。
「初めまして、エレンピオスの〈妖精〉。俺はリドウ。そこにいるルドガー君の上司だよ」
傍らのルドガーを見上げると、ルドガーは首肯した。本当らしいが、フェイが知りたかったのはそこではない。
「ルドガーが言うことを聞かなきゃいけない人?」
「あ、ああ…」
「穿ってくれるねェ、〈妖精〉サン。――そういうわけでルドガー君。室長として命令だ。回収した〈カナンの道標〉を提出しろ」
ルドガーはフェイに白金の歯車の集合体を渡すよう言った。フェイは素直にそれをルドガーに渡した。
さらにそれを、ルドガーがリドウの前へ行って差し出した。リドウはノーマルエージェントが開けたアタッシュケースに、白金の歯車の集合体を収めた。
「確かに。初任務ご苦労さん、新人君」
「ありがとう、ございます」
「で、だ。せっかく一仕事終えたところ悪いが、もう一働きしてもらおう。――ル
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