早とちりは俺の悪癖です。
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するんだ!
しっかりしろ、俺!
椅子に座り直しMituruに向き直る。
「失礼しました。 それでは、遠慮なく」
有言実行。 言葉通り、遠慮なく石を急所に叩き込んだ。
これで、この後仮に俺が下手を打ったとしてもギリギリ逆転は不可能。
終わりだ。
「……っ! ……ありません」
「ありがとうございました」
Mituruは少し顔を歪めたものの、仕方なさそうに笑って投了した。
実力が互角の俺に、置き碁で勝てるはずが無いのはMituruも分かっていただろう。
あまり悔しそうでは無い。
「すげー! 香坂先生に勝った!」
「馬鹿、置石してたからでしょ」
「でも凄いよ! 三子でプロに勝っちゃったんだよ!?」
「途中からどっちが勝ってんのか全然わかんなかった……」
「それよりセンセー早く帰んないと! 火事になるよっ」
生徒に促され、椅子から立ち上がった。
「そうだな。 それじゃあ、美鶴先生。 片付けは大丈夫なので最後に一言お願いします」
Mituruも頷いて黒板の前まで行き、子ども達を見回した。
「えー、最後に格好悪いところを見せてしまったが、君たちの顧問の先生はトップクラスのプロにも匹敵する実力の持ち主だ。 彼についていけば間違いなく強くなれる。 現状でも基礎力は十分にあるし、なかなか面白い発想をする子が多くて今日は私も楽しめたよ。 君たちのこれからを楽しみにしている。 以上だ」
「「ありがとうございましたー!」」
○ ● ○
静かな相談室で香坂美鶴ことMituruと向き合う。
緊張で心臓がズクズクと痛む。
しかし、Mituruは気負う事無く自然体だ。
余裕あり気な態度に恐怖感が募る。
それを悟られないよう、俺は強く美鶴を睨みつけた。
「で、どういうことなんだ?」
「何がだ?」
「何が!? 何でお前がここに居るのかってことに決まってるだろ!」
白々しい言葉に思わず語気を荒げるとMituruは困惑したように眉を顰めた。
「何でって……囲碁指導のボランティアだが?」
「は……?」
「偶然選んだ中学にまさかSi-Naがいるとは思わなかった。 本当に先生になっていたんだな」
「ぐう、ぜん……? じゃあ、リアル特定したとかじゃなくて、本当にたまたまこの中学に?」
「リアル特定? そんなことするはず無いだろう。 ……まぁ、リアルを質問攻めにした過去がある以上、説得力無いかもしれないが――」
Mituruの言葉に愕然とする。
偶然、という選択肢を考えていなかった。
それが一番自然な選択肢だったのに。
「いや……信じる。 偶然、偶然かぁー……」
ほっとして脱力し床にしゃがみ込む。
あー……安心したらだんだん恥ずかしくなってきた。
自意識
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