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人狼と雷狼竜
修行の成果と……
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生態か?
 だが、アオアシラはドスジャギィに対して自身が優位に立てる点は膂力(りょりょく)位の物だろう。単なる力技で集団戦を駆使する群に戦いを挑むものか?
 考えている内に円陣が出来た。そして椿が見たという方向に対し、俺が先頭に立つ。勿論、左右に夏空と梓の射出武器を持つ者を、後方には一徹ともう一人槍を持ったハンターを配置して万一包囲された際に対応できるように構える。
「来たか」
 俺の言葉に全員が反応する。
 木々の向こうからアオアシラが姿を現した。
 ……だが妙だ。しきりに後方を気にしているようだ。まるで―――――――
「全員防御体制! 12時方向!」
 俺の急な指示の変更に全員が戸惑う。
「オイ! どうなってんだよ!?」
 朱美の仲間の一人、太刀を持った男が声を荒げた。俺は言葉を返さずに前に出た。
 俺の姿を見たアオアシラは一度立ち止まると、左へと方向転換して去っていく。やはりな……
 他の面々はアオアシラの行動が理解出来なかったようだ。単に大勢で待ち構えられて、諦めたとでも思っているのだろう。
「え?」
 小冬が声を漏らした。
「どうしたの小冬ちゃん?」
「……(まず)い」
「え?」
 小冬は気付いたらしい。もう少し速く気が付ければ形にはなるのだろうか。
「ここ、拙い」
「ええ。嫌な予感がしますぅ」
「に、逃げないと……」
 夏空と神無も気付いたようだがもう遅い。俺は腰の刀の鞘を握った。いつでも抜刀できるように――――――――そう。アオアシラは逃げていたのだ。自分が狙われていたのではない。相手の視界に入らない為に。
 大きな何かが地面を打つ音が聞こえた。重い音だ。一定のペースで此方に近付いて来る。近くに水溜りでもあれば波紋が起こるだろう。
「お、お母さん」
 救助者の中の子供の声が聞こえた。だが、母親は何も答えない。声を出す精神的な余裕すら、一般人には存在しない。
 そして、それが姿を現した。
「ジン……オウガ……!」
 誰かの搾り出したような声が僅かに耳に入るが、そんな者は最早雑音に過ぎない。
 碧の双眸が俺を捉える。間違いない。あの夜のジンオウガだ。
 俺は陣の先頭から右に逸れるように歩を進めた。決して背後の者達への道を譲るわけではない。奴の目は――――――――――俺以外見えていない。
「ヴォル君……」
 神無が何か言っていたが、瑣末事だ。今はただ……己の牙で語り合うだけだ。
 不意に風が吹いた。強い風だ。激しく揺らされた木々が周囲に無数の落ち葉を流れるように散らし―――――――
「アウォオオオオオオオオオオン!!!!」
「はああああああああああああっ!!!!」
 俺とジンオウガの咆哮でその全てが鋭い音を立てて破裂し、その直後には俺と奴は互いに交差していた。

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