修行の成果と……
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は救助者の様子を診てくれ」
『了解』
勝利の余韻に浸ることも無くヴォルフは指示を出し、指示を受けた彼女達は一斉に行動に移った。
「さて……」
「分かってるよ。さっきの砲撃だろ?」
自分にだけ指示を出さずに残した事で、その意図を察していた正太郎は自身が招いた危機を自ら口にした。
「一度も訓練に用いなかった武器を実戦で使う事が、どれほど危険か分かっただろう?」
訓練で使うことの無かった武器の使用。取り分け銃槍という特殊な武器は相当に慣らさなければならない物だ。担い手自身も、共に戦う者達も。
「ああ。今回は今までどおり訓練で使ってた槍を使うべきだったんだ。そうすりゃあ、皆を危険に晒させずに済んだ」
「それで良い」
顔を歪めて悔しそうに告げる正太郎に、ヴォルフは簡潔に告げる。
「自分の非に、自分で気付き自分で認めて悔いる。それが出来ればお前はまだ伸びる。銃槍をこれからも使い続けると良い」
ヴォルフはそう言い残すと少し放れた所にあったジャギィノスの骸に近付いて、苦無を回収し始めた。
「……敵わねえな」
正太郎はヴォルフの言葉を脳裏で反芻させつつ、溜息混じりに呟いた。よくよく思い出してみれば、今回ヴォルフはやたらと自分達に視線を向けながら戦っていた。
それは訓練の成果を見極めるためだろうが、自分が仕出かすだろうミスに逸早く反応できるように様子を伺っていたのだという事が、正太郎は今になって理解した。
とても年下とは思えない、年長者のような振る舞いは流石はベテランというか、今までの人生を戦いのみに費やしてきた者との違いというか……そういった物を、改めて知った。
「怒られてやんの」
「ぬなっ!?」
突然の背後からの呟きに正太郎は奇声を上げつつ跳び上がった。その拍子に背負った銃槍と楯の重量もあってかバランスを崩して尻餅をついた。
「ふ・ふ・ふ」
見れば小冬が意地の悪い挑発的な笑顔で、正太郎を見下ろしていた。
「小冬嬢……びっくりさせんでくれよ」
「嫌よ。つまらない」
正太郎は小冬の言葉に苦笑しつつも立ち上がり、彼女はそんな彼に興味を無くしたのか、後方でいつもの呑気な笑顔を浮かべた夏空の方へと向かった。
そんな小冬を見ながら溜息を吐くと、アイルーのトラが近付いてくる。
「お疲れニャ」
トラはそう言って背負っていた筒状の鞄から竹製の水差しを出して勧めてくる。
「ありがとよ」
水差しを受け取りながら、次からの訓練に思いを馳せる。ガンランスを自在に使いこなす為の訓練の様子……の筈が先日の模擬訓練でボコボコにされた事を真っ先に思い出してしまい、憂鬱になった。
「ああ。本当に敵わねえや」
余談だが梓曰く……何やら呟きながら水を飲む彼の姿は哀愁が漂っていたらしい。
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